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フィンランドの教育を視察レポート
学力世界一の背景は小〜高校までの一貫した目標
メリハリのある高校教育
音楽室にて歓迎
音楽室で笛と歌で我々一行を歓迎してくれた6年生(小学生)

 2003PISA調査で学力世界一になったフィンランドは、保育園から高校まで、一貫した目線で教育が行われているようである。保育園から、子どもたちが自主的に自分のペースで行動し自分の考えで選ぶことを「待つ」教育が重視され、小中高等学校では、児童・生徒の恒久的な「成長」のために良い、と思われる様々な科目が用意される。

フィンランドでは、大学まで授業料が無料で、通学交通費や教材費、給食費も無料である。そして、よく言われるように教師が尊敬されており、大学の教育学部の合格倍率は12、3人に一人しか入学できない狭き門になっている。しかも、教師になるには修士号の取得が義務付けられている。

何よりフィンランドの「学力世界一」の背景にあるのは、国全体が持ついいリズムではないだろうか。例えば、日本のように勉強しないでもどこかの高校・大学に入れるといったことはなく、高校入学には中学校の絶対評価に基づく一定の評点以上を取得することが課せられ、大学入学には相対評価に基づく全国統一大学入学資格試験に合格し、志望する学部学科が課す専門的な試験をクリアしなければならない。

このいいリズムを作り出している一つに、かなり厳しいフィンランドの高校教育があるのではないか、と推論する。

フィンランドの高校は単位制・5学期制で、1学期は5から6週間で最後の1週間が試験期間となり、択一・穴埋めといった問題ではなく、記述式をメインとした試験が行われる。そして、これが、3年間繰り返され、最後に高等学校卒業資格検定試験である全国統一大学入学資格試験を受ける。

  全国統一資格試験は、相対評価である。従って、全国統一試験の合格率が高い高校、ヘルシンキ大学教育学部・医学部に入りやすい高校、といった評価が行われそうなものだが、価値観が全く違うのか、何度聞いてもフィンランドでは、そうした形の高校の評価はなされないという。一人ひとりの生徒が何を学ぼうとし、どんな職業を選ぼうとしているのかが重視されている。

  日本で言えば、戦前の旧制高校のようなピリッとした高校教育があって、小学校、中学校の教育も維持されている、と言えるかもしれない。
 

【2007年9月29日号】


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