教師が、世間一般や保護者・生徒から尊敬されている。94年のフィンランド教育改革以降、全ての教師は大学院修士課程(MA)を修得しており、教育や指導方法に対して深い知識と実践力を兼ね備えている。年間で最大1か月間、教育省や大学が企画する研修を受講するということで、指導力を高めるための環境も充実している。日本も過去に「三歩下がって師の影踏まず」という時代があったが、保護者が高学歴となり、教師の地位が低下しつつある。現在、教職員大学院の新設が叫ばれており、「子どもの生きる力」をつけるための教師の資質・指導力向上が急務だ。
教育行政が、低学力児童生徒の救済措置を徹底している。全ての学校において放課後、各教科の補習授業が行われている。児童生徒も補習授業を当然のことと受け止め「わからないまま放置」させておらず、落ちこぼれを作らないシステムがフィンランド学校教育の柱になっている。80年代に習熟度別クラス編成をしたことがあったが効果が見られなかったため、現在の小中学校は1クラス20〜30人の統合クラスが一般的で、軽度知的障害・LD・ADHD等の児童生徒がいる場合、専門教員が教科担任と共にTTでの指導にあたる。保護者は、インターネットで子どもの成績や生活状況を常に把握でき、補習授業で成果が上がらない場合、メールや三者懇談等を通して解決の糸口を探っている。
日本では、学校選択制や習熟度別クラスで子どもの学力が向上したとの実証がないにもかかわらず、それらの導入に走る自治体が多く、視察後改めて教育改革の舵取りが大変危惧されると強く感じた。
もう一つ学校教育の評価について。80年代には教育省査察官が学校を監査していたが、学校改善につながらなかったため、現在では学校を良く知る自治体(教委・市議・PTA)が評価を行っている。全国統一テストの結果で、自治体は各学校の学力面での相対位置を把握してはいるが、学校評価基準としては、学校成績よりも教職員集団や職場の雰囲気・チームワークに重点を置いているとのことだ。
【2007年2月3日号】