オジャラ校長 |
3年生の環境の授業 |
フクマ ヌンミ小学校 |
6年生、アジアを学ぶ |
ランチルームで |
ヘルシンキ市からバスで約1時間、人口増加市であるビヒティ市のフクマ ヌンミ小学校を訪問した。2006年3月に開校した平屋建ての新しい学校で、ランチルームや図書室、教室の大きなガラス窓が印象的な学校だ。
児童数80名、教員3名、教員助手1名の小規模校だが、託児所、就学前1年学級も付属している。自治体職員を15年経験後校長になったオジャラさんが教室を案内しながら、説明してくれた。フィンランドでは学校長は立候補制で、校長も授業を受け持つことが義務付けられている。
▼ 託児所&就学前学級
就学前1年学級の目的は1)小学校に上るための団体教育、2)自分で自分の世話ができるようにする、3)文字の読み書きや計算の基礎。1年学級への通学期間は親が決め、1か月間でもいいという。
託児所でユニークなのは、保護者の要望を入れて子どもたち一人ひとりの「育成プラン」を作ることだ。例えば、「○月までにおまるをできるようにする」「おしゃぶりを捨てる」といった目標を保護者と一緒に設定する。「集中力をもっと高めたい」という要望が保護者から出れば、「では、やってみましょう」とプランをねる。
託児所の責任者は、「最も難しいことは家族が望むことを必ずしも提供できないことです。ただ、社会的に育ってもらうことが目標です」と語る。
▼ 教育方針・授業時間
1・2年生の1週間あたりの授業時数は19時間、3・4年生は24時間、5・6年生は25時間(2学年合同で行われている)。
フィンランドでは、国家教育委員会が方針を出し、市町村が各教科の具体的な目標を作成し授業時間も決める。ビヒティ市では国が定める最低限の授業時間しか設定していない。
オジャラ校長は、「自治体が設定する目標は実際より高すぎるが、教員には自治体が定めた目標を達成する義務がある」と教育への情熱を語る。
オジャラ氏は、フィンランドの教育方針として次のような要素を語ってくれた。
○先生に聞かないで、自分で調べることが大切である。
○先生は辞書ではない、ものを知るためのガイドであり、教員が教えなければならないことは、全生徒が共通して知っていなかればならない最低限のことである。
その結果として、宿題が多くなるようで、また一般に1週間に1回教科の補習がある。さらに、特別な支援を必要とする子どもがいる場合は、自治体に依頼して補習専門の教員や職員を加配する。
▼ 学校評価
学校の評価は、以前はイギリスのように学校査察官が巡回して行われていたが、現在は廃止されている。変わって重視されているのが、保護者からの評価である。ただ、日本のように保護者の意見が教育を左右することはないようで、「学校の授業計画、運営計画に保護者の意見は一切反映されない。保護者にはその権利がない」とオジャラ校長は、学校運営の長としての責務を強調する。
▼ 教室環境
各教室にテレビ、OHP、スクリーン、プロジェクターがあり、教科の中で必要なときに活用される。コンピュータは、オープンスペースに5台配置。コンピュータの活用方法を教える時間はなく、プレゼンテーションといった学習活動はない。
教室は1教室24人を限度に設計され、前方に日本より大き目の黒板、周囲の壁には子どもたちの作品が飾られている。机は大人でも使用できそうな大きさでこの学校が特注したもので、小さな子も椅子の高さを調整して同じ机を使う。移動が便利なように、教室と教室の間にドアと小部屋があり、廊下を介さずに隣の教室に行くことができるようになっている。小部屋にいたずらをした子どもを座らせることもある。
▼ 授業
3・4年生の環境の授業。人文・地理、生物を学ぶ時間で、世界地図の掛図を示しながら先生が説明。子ども達の手元には白地図のプリントがあり、説明を聞き質問をしながら書き込んでいく。フィンランドや北欧4国の地理や環境を学ぶのが狙いだ。
環境の授業で学習後に図工の授業で地球を描く、など教科を連動させている。地理でアフリカを学習後、音楽の授業でアフリカの曲を教えるなど。世界地図をどの教室にも貼り、世界の概観が頭に入るようにしている。
また、3・4年生から男女とも裁縫・技術をする。技術では木工・金属加工も行い、技術はオジャラ校長が担当している。
教科書、副教材費、給食費、通学交通費すべて無料である。
▼ 家庭への学習連絡
1年間に4回、学習態度や学習状況について通知を出す。3年生までは文章で、4年生から数字で評価する。通知の方法は自治体によって異なり、文章に残さず、保護者との相談のみという自治体もある。
【2007年2月3日号】