今後の労働政策に関する各種研究を行っている、独立行政法人労働政策研究・研修機構。約500種類の職業情報にアクセスできる総合的な職業情報システム「キャリアマトリックス」の公開や、国内の全4年制大学を対象にした「大学生の就職・募集採用活動等実態調査結果U」(以下、調査結果)も実施、公表している。同調査に携わった同機構人材育成研究部門研究員・堀有喜衣氏に大学生の就活動向について話を聞いた。
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■ 「規模の大きい私立の伝統校や国公立では、持ち回りでキャリアセンター職員を担うことが多いが、私立大学の多くは専門職として民間出身の職員を登用する傾向にあります。特に新設の私立では民間出身者の人脈やノウハウを生かしながら、インターンシップを積極的に活用するなど、就職先を広げようと様々な工夫をしています」
多くの4年制大学に共通する大きな悩みのひとつが、進路未定者をどのように少なくするかという点だ。「大学に通学するものの授業を熱心に受講するわけでも、部活やサークル活動に力を入れるわけでもない、大学との距離が遠い学生が増えている。どこの大学にもそうした学生が進路未定者として一定層含まれているのが実情」
就職活動をしていると、学生なら一度は自分の進路に悩むもの。そうした時に支えとなるのは、先輩やキャリアセンターになる。しかし進路未定者の多くは、相談する相手がおらず、取り残されてしまう。私立の中にはそうした学生全員に直接電話をかけ、キャリアセンターへの来訪を呼びかけるところもあるという。
「昔は就職部に行くことが就職活動だったが、インターネットが普及した現在、就職部・キャリアセンターの役割も変わった。情報量ではなく、これまで以上に相談機能を重視するところが増え、職員がキャリアカウンセラー資格を取れるよう支援する大学も多い」
職業観の育成や職場体験の実施など、中学高校でのキャリア形成支援の取り組みも充実してきた一方で、堀氏はそれだけでは十分ではないと考えている。
「働き方が多様化した今日、自分がどこにどのように雇われているのか、わかりにくくなった。自らをフリーターと思っていても、実際は直接雇われているパート・アルバイトもあれば、請負や業務委託といったケースもある。アンケート等には表れにくいが、フリーターやニートを対象にヒアリングを行うと、書類上は自ら望んで退職したことになっているが、実際は勤務先から『次の勤め先でクビと説明すると恥ずかしいから、辞職という形にしたら』と勧められて退職届を提出している学生も少なくなかった。労働者の権利については、直面しなければ知る機会が少ないのが現状です。今後は学校での指導が必要になります」
調査結果は同機構ホームページでも公開されている。
http://www.jil.go.jp/
(聞き手 吉木孝光)
【2006年11月4日号】