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キャリア教育どう取り組む -17-
”キャリア教育の”指導者”を育成
−文科省初中局児童生徒課 浜谷 貢氏

 校長・教員などの学校教育関係職員への研修を一元的、効率的に行い、地域の中核となるリーダーの育成を行う、独立行政法人教員研修センター。小中高等学校におけるキャリア教育の拡大・定着を目指し、平成16年度から始まった「キャリア教育を推進するための指導者の養成を目的とした研修」(以下、研修)は、研究協議、演習を中心にした実践的な研修プログラムだ。同研修の目的について文部科学省初等中等教育局児童生徒課指導調査係長・浜谷貢氏に話を聞いた。

 平成16年度から始まったこの研修は、これまで600名(18年度分を含む)にのぼる教員等が受講。東部と西部の2ブロックで実施されており、それぞれ基礎(5日間)と応用(3日間)で構成されている。

  受講者には基礎コース(6月)を受ける前にキャリア教育の実践上の「課題」について、応用コース(9月)では基礎コース受講後の3か月の実践を踏まえた「課題」と「解決策」について資料提出が求められている。

  浜谷氏は「キャリア教育の共通認識と課題を整理して受講者同士のグループディスカッションに役立てるため、事前に提出される課題や解決策を、演習用冊子として配布している」と説明する。

  キャリア教育への注目が集まる一方で、学業成績をもとに進学先を紹介する従来どおりの進路指導や、キャリア教育を職場体験として捉えている現場も依然として存在する。この研修では全国の指導的立場の教員等を対象に、そうした誤解を解消し、キャリアカウンセラーとしての基礎を身に付けられるよう、研究協議や演習に重きを置いたプログラムが組まれている。

  「子どもが何に対して不安を抱き、興味をもっているか、気付かなければいけない。それは『キャリア教育』としてだけではなく、教員の資質向上にもつながる。すぐには育たないかもしれないが、本研修を通してキャリアカウンセラーの入り口に立って欲しい」。

  そこで研修プログラムには、「コミュニケーションスキルの基礎」「キャリア・カウンセリングについての理解」「カウンセリング・プロセス―相談関係づくりの大切さを知る―」「カウンセリング過程の基本」等を用意し、演習の場を多く設けている。

  「今後、キャリア教育をさらに推進するため、受講者には本研修を通じて身につけたものを持ち帰って、勤務地域で広く普及させて欲しい」。

  取組みが進んでいる地域では、保護者や地域住民が『キャリア教育』への理解が進んでいる。逆に取組みに遅れが見られる地域では、そもそもキャリア教育の意義が正しく伝わっていないという。

  「昨年度の中央教育審議会で学識者から『もう少しイベント的に広く展開していくことも必要』と指摘を受けた。そこで今年11月には、キャリア教育に関するフォーラムの開催も予定している」。

  今後の継続した取り組みが期待されている。

(聞き手 吉木孝光)

【2006年10月7日号】


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