約20年前から業界情報等を紹介する副読本を小・中・高校に提供してきた、株式会社電通パブリックリレーションズ。今年4月、全国の中学・高校(約1500校)に向け、キャリア教育・進路指導用学習教材(副読本)のシリーズ化をスタートさせた同社金融・大学プロジェクト・板岡裕成部長に話を聞いた。
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■「社会」と「学校」をつなぐツールに
「進学」か「就職」か、また同じ「進学」であっても大学と専門学校では相談内容も異なる。生徒一人一人の進路指導を行なう上で、先生には多くの知識や資料が必要だ。
「先生方から話を聞くと、各種職業や専門学校などに関する指導用の情報や教材が揃っていないため、特殊性の高い専門学校より、進路への選択性の高い大学への進学を勧める傾向にある。しかし、先生方は充実した進路指導を行なうために、幅広い情報や指導本を求めている」
今回の職業紹介シリーズの第一弾は、(社)日本理容美容教育センター(発行元)から受託し、同副読本を企画・制作した。理容・美容業界への理解と興味を喚起させ、学校現場に即した副読本となるよう、(財)進路指導協会や全国中学校進路指導連絡協議会、全国高等学校進路指導協議会の監修、等を受け「理容・美容の世界」「利用・美容 職場体験ガイダンス(以下ガイダンス)」を制作。全国の公立・私立の中学・高校へ向け10万冊の配布活動をスタートさせた。
学校用に制作された「理容・美容の世界」では、適性度チェックから理容・美容師として働く人のインタビューのほか、実際に行なう職場体験の内容、理容・美容師になるために必要な資格の紹介など、16ページの充実した誌面構成だ。
「通常のPR誌と比べて時間や手間は掛かっているが、その分、指導教師や生徒達の理解度は高く、理容・美容業界や職業選択への興味を大いに抱いてくれると思う。職場体験プログラムを実施すると、これまで受け入れ側にあった『面倒』という意識が変化する。キャリア教育がレールに乗るためには、受け入れ先の拡大も必要だ」
そこで、企業向け職場体験マニュアルとして『ガイダンス』も作成。キャリア教育や職場体験プログラムについて平易に説明する同書は、理容・美容関係者からも好評を得ているという。
職場体験など企業・地域の協力が必要になるキャリア教育では、各々をつなぐ橋渡し役が欠かせない。
「本来、大学や専門学校などの高等教育機関は、将来の夢を実現させる手段として存在すべきであり、そのためには地域や企業との連携をもっと図る必要がある。今回の冊子が教育と社会(職業)を繋ぐツールになってほしい」と板岡氏は同書の役割に期待する。
同社では、今後も需要の高い職業紹介の副読本のシリーズ化を今年度中に企画制作していく構えだ。
(聞き手 吉木孝光)
【2006年6月3日号】