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キャリア教育どう取り組む -12-
実体験をベースに自立心や創造性を育成
−セルフウィング(株)代表取締役 平井由紀子氏

 キャリア教育の一環として起業家教育を取り入れる学校も少なくない。小学生向けの起業家教育プログラム「V―Kids」(これまで1万名以上の受講)など、小学生から大学生まで幅広く起業家教育を実施する平井由紀子氏(セルフウィング株式会社代表取締役)に話を聞いた。

小学生が企業を擬似体験「V-Kids」
 早稲田大学発のベンチャー企業として、平成12年に設立されたセルフウィング株式会社では、様々な起業家教育に関するプログラムを用意。自分自身の興味・関心への「気づき」を促す「キャリアプラン」、小学生が起業に関する一連の活動を疑似体験できる「V―Kids」など、実体験をベースに子どもたちの自立心や創造性等を育成している。

 「参加する子どもは、経済という設定の中で、計算に強い子やモノを作ることが得意な子など、様々な人達がいて事業が成立することを知り、自己認識や他者を尊重する力、倫理観などを身につける。自分の立てた仮説が違ってくるケースもあるが、成長段階ではそうした良い失敗を繰り返すことが大切になります」。

 「販売」の場面では、自分以外の大人としっかりコミュニケーションを取れるようになることが第一の目的に据えられており、ただのお金儲けでは終わらせない。各プログラムは、人との関わり合いの中で自分の強みを認識できるように工夫。

 「産業が変わると共に、セルフウィングの教材も変わる。そういう意味では教育コンテンツの開発を着実に行ってきた」と述べる平井代表だが、昨年12月には同社で培ったコンテンツを生かして、地場産業の促進を目的としたフューチャー・ラボ株式会社を設立した。

 「フューチャー・ラボは、これまでの地域での経験やセルフウィングのコンテンツを活用しながら地場産業を創出する。産業人材を実際に外へ送り出す役割です」。

 また現在は教育関係者向けの起業家教育の教材開発にも着手。来年度にはビデオやマニュアルなどをセットにした小・中学校向けの指導案と教材を提供する。

 「事業計画や商品企画の立案、プレゼンテーション等を行い、自己認識や論理的思考を育む5時間のプランや、販売・マーケティング・決算等を行うなかで、コミュニケーション力や観察力、分析力などを鍛える10時間以上のプランなど、学校現場に応じたカリキュラムを予定しています」。

 自治体、学校からの申し込みに対応しそれぞれ提供する予定で、指導案を効果的に授業に取り入れるため、教師には同社が用意する指導者講習を受講してもらうことも検討しているという。

 「今後も開発したプログラムを公教育の場で使ってもらうために、まずは私企業として着実に事業を展開していきたい」と語る平井代表。起業家教育への理解が深まるなか、学校現場での活用に注目したい。

(聞き手 吉木孝光)

【2006年5月6日号】


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