教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
TOP教育マルチメディアニュース   バックナンバー
東京国際アニメフェア
世界に注目される『日本アニメ』
           クリエイター育成に課題

大学・専門学校が出店・入学相談

「EUにおいて、日本アニメが注目されているのは、日本アニメがディズニーなどと比較し圧倒的に『コストパフォーマンスのよい』コンテンツだから、という一面もある。そういったイメージを払拭しつつ、ビジネス展開を考えていく必要がある」

 さらに「海賊版」の横行は、スペインほどではないにせよ、注意しなければならない課題、と豊永氏は指摘する。スペインでは、日本のキャラクター『ペコちゃん』の金髪版が商標登録までされている。また、『舌の出ていないペコちゃん』も、オランダ企業が英国特許庁に申請、商標登録されている。さらにフランスでは「ドラゴン・フォール」が商標登録され、既に漫画が8巻まで出ているという。これらはEUの『パロディ文化』から派生した傾向かもしれない、としながら「日本コンテンツで海外ビジネス展開を考えるとき、著作権や商標登録は非常に重要」と豊永氏は述べる。
 加えて「今後、NARUTO以上のコンテンツに成り得るものが今日本にあるか考えると、まだまだ弱いと感じる」と述べる。

   ◇  ◇

 「東京国際アニメフェア」では、新作アニメーションのプロモーションで華やかなイベントが数多く開催され、海外コンテンツ制作メーカーも多く出展する中、将来の「日本アニメ」を背負うべきクリエイターら育成の観点から、アニメーション制作に関わる大学や専門学校らも出展した。

 平成17年に開設された大阪芸術大学(大阪府)キャラクター造形学科では、マンガ・アニメ・ゲームが専門的に学べる「キャラクター造形学科」の学生作品を中心に展示。開設と同時に発行された「大学漫画」は、若い才能を育成することを目的とし、ゼミ生の作品の中から優秀作品を掲載している。

 平成12年、日本で初となるマンガ学科を開設した京都精華大学(京都府)では、マンガ学部にアニメーション学科も開設。プロがプロを育てるカリキュラムを構築している。

 神戸芸術工科大学(兵庫県)では、先端芸術学部メディア表現学科(まんが・アニメーション専攻、映画専攻、写真・CG専攻)を中心に、パネル展示や本学スタッフによるカリキュラム内容の説明、学問の面白さについて高校生へのアドバイスを行った。

 創造学園大学(群馬県)では、漫画・アニメ・声優コースがあり、基礎から応用まで現役の漫画家、声優らから講義を受けることができる。

 長岡造形大学(新潟県)は、卒業生や在学生が制作したアニメーション作品を上映。
 日本工学院専門学校・日本工学院八王子専門学校・日本工学院北海道専門学校(東京都)では、優秀作品の展示や学生自身による作品プレゼンテーションなど。

 文京学院大学(東京都)は、学生制作によるオリジナル短編3D-CGアニメーションの展示のほか、制作作品の商品化を入学予定の高校生が立案、それをもとにプレゼンテーションを行うなどした。

 早稲田大学森島研究室は、潟Iー・エル・エム・デジタルと轄総ロ電気通信基礎技術研究所 音声言語コミュニケーション研究所と「デジタルアニメーションラボ」としてデジタルアニメーションの制作を支援する技術の共同研究を進めており、アニメ作品制作を支援するさまざまな技術を紹介した。

   ◇   ◇


 当日は、保護者と共に「進路相談」に訪れる学生もいた。東京テクノロジーコミュニケーション専門学校で広報を務める和田育美氏は「かつては高校卒業生が中心だったが、最近は大学卒業者の入学も多く、大学退学者を含めると4割程度が大学入学経験のある学生」と述べる。

 一方で、企業側が求める「人材ニーズ」は、その「質」が年々高まってきている傾向もあるようだ。「アニメーション制作関連の入学者は増えている。彼らの中から名のあるコンテンツ制作会社に入社できる生徒はもちろんいるが、まだまだひと握り。企業から求めらる人材の質が年々高まっており、技術関連のニーズに比較すると、そのレベルに達することが難しいようだ」(東京都内専門学校・広報)ということだ。

 世界的なヒットコンテンツ制作のためには、「偶発性」に頼るのではなく、一歩進んだ「戦略」が必要。しかも制作に関して求められる「スキル」そして「センス」の質は高い  「アニメ」王国日本の将来を担う人材育成は、そう簡単なことではなさそうだ。

関連記事 欧州の日本アニメ事情

【2008年4月5日号】

記事のご感想をお寄せください

新聞購読お申し込みはこちら