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新学習指導要領

算数・数学科〜「体験的活動」を一層重視

数の本質が持つ”感覚”身につける

文部科学省教育課程調査官・算数・数学科教育担当 吉川 成夫 

 「算数・数学」は、TIMSSでは、かつて日本の子どもたちは世界でトップでした。当時はほとんどニュースに取り上げられなかったにもかかわらず、PISAの順位が下がった、ということで最近は非常に算数・数学が注目されています。

  PISAの調査結果には様々な見方がありますが、「世界の上位」にいることは間違いありません。分数の掛け算や割り算などは、小学校高学年では全国の9割以上が正解しており、「計算」力はある、と考えて良いでしょう。

  にもかかわらず、「計算」の「意味」を問う問題は、あまりできていませんでした。例えば「3分の2分間に6分の5リットル出る水道では、1分間に何リットルの水が出るか」という問題は、正答率が低かった。「意味」をよく分かっていれば出来る問題なのですが、単純な数字に置き換えて考えてみる―など指導を工夫していく必要があります。

  それ以上に深刻な問題は、我が国の小学校6年生が「算数が好き」と答えた割合が世界でも低位だった点です。これに対応し、新学習指導要領では、「算数的活動・数学的活動」の重要性が初めて取り上げられることになります。

  小学校段階では既に作業的体験的な活動が取り入れられていますが、「数」「式」「図」「グラフ」などを用いた思考力・表現力を重視するため、改訂では小学校低学年から「数量関係」の領域を設けます。

  小学校中学年では「計算の見積もり」を指導し、計算の仕方や結果について見通しを持ったり、適切に判断したりできるようにする指導を設けます。例えば「9・3×0・82」という小数点の計算は、約8割の児童が正答しますが、誤答の多くが、小数点の位置を間違い、76・26という間違いです。ここで「惜しかったね」ではなく、「ゼロより小さい数をかけているのだから、元の数より大きな数字になるはずはない」ことを指導、数の本質が持つ「感覚」を身につけていただきたいわけです。

  「面積を求める」項目でも、この「感覚」は重視されています。「公式」を覚え込む、という指導ではなく、面積の求め方などを自分で考え、説明することを重視します。高学年では既習の面積の求め方を活用して「台形」や「ひし形」の面積の求め方を考え、説明する内容を指導していきます。


◇   ◇

  中学校でも「数学的活動」が一層重視されていきます。例えば、数学を生み出す活動、数学を利用する活動、数学的に伝え合う活動、数学的に実感する活動などです。

  今後は中学校高等学校段階でも小学校と同様、様々な教材教具を活用し、作業的体験的な活動をやっていただきたいですね。例えば(a+b) =a +2ab+b という公式を、図を書いて説明する、などの「体験的活動」です。

  小中高すべての段階を通し、各学年段階に応じて反復学習を行い、学習し身につけたものを日常生活や他教科との学習へ活用していくことで、数の「意味」「本質」がわかる喜びや学ぶ意義を実感し、関心や意欲を高めることにつなげていくことで「生きる力」を育む、という方向性です。

授業時数の増加できめ細かい指導と体験的活動を

 こういった活動を下支えしてくためには授業時数の増加が必要であり、新学習指導要領では、小学校低学年で週1時間、中学年で週2時間程度、授業時数が増加しています。また、平成21年度から移行期間が設けられますが、その期間に「必ずやらなければならないこと」があります。例えば新学習指導要領では小学校3年生から小数や分数が扱われますが、現行では小学校4年生からになっています。移行期間の3年生は、教科書に載っていなくても小数や分数を学ぶ必要がある、ということです。移行期間措置についての詳細は、なるべく早い時期に出していきたいと考えています。

【2008年2月2日号】

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