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新学習指導要領

理科〜「風評に惑わされない判断力」育成する

理科の”重要性”認識できる内容に

文部科学省教育課程調査官・理科教育担当 清原 洋一 

 子どもたちの理科学習に対する意識の低さが問題となっていますが、他教科と比較すると、理科は、むしろ小学校段階において「好き」と答える比率が高くなっています。むしろ問題は、その「大切さ」「重要性」に目がいっていないこと。「好き」かもしれないけど「必要」だとは思っていない、という傾向があるようです。

  さらに深刻な問題は、国民全体の科学に対する関心の低さです。内閣府の調査によると、「科学技術についてのニュースや話題」について「関心がない」と答えている率が増えており、これは大きな課題です。
  子どもたちの自然体験の少なさは予想以上に進んでおり、「日の出や日の入りを見たことがない」子どもは半数以上となっています(川村学園女子大学調査より)。

  これら社会情勢から、理科教育としては「小中高等学校を通じ、発達段階に応じて、子どもたちが知的好奇心や探究心をもって、自然に親しみ、目的意識をもった観察・実験を行うことにより、科学的に調べる能力や態度」を育て、「科学的な見方や考え方」を養う方向です。

小学校理科「2区分」に

 学習指導要領については各学校段階で、他国が何歳に何を学んでいるのかも参照しながら、構造化していきます。小学校3年生では、理科的なベースになるような体験も交えた学習として「風やゴムのはたらき」などを付け加える動きがあります。「人体」に関しては小学校4年生で充実させ、月の満ち欠けは小学校6年生に入れるなどを検討中です。小中の連携を取りやすくするために、小学校理科は2区分とします。

  中学校では、「進化」、「遺伝」の中で「DNA」の存在に触れること、「力の釣り合いや合成・分解」などを3年生で充実させ、現行では1年生で行う酸とアルカリについては、中学校3年生でイオンも含めて行うなどを検討しています。内容の充実に関して、「風評に惑わされない冷静な判断ができる国民の育成」といった視点も重視しています。

  高等学校については、理科総合等の内容をある程度中学校に移行したため、人間が科学をとおして発展してきたことを、観察や実験を通じて学ぶ科目「科学と人間生活」を新設しています。

  今後、理科教育は「科学的な見方や概念の定着」と「科学的探究の能力の育成」をしっかりと身に着け、それらを実社会において活用・自分なりの判断の基準とし、「自然体験」を通じて、理科的な豊かな感性を育む、という方向性となります。

  2月半ばには指導要領案を公表し、パブリックコメントを募集しますので、ぜひ積極的に意見をお寄せください。
  今回の学習指導要領改訂における大きな特徴は、平成18年の教育基本法改正が大きく関わっている点です。これまでにない表現として、教育基本法「教育の目標」第二条には、「幅広い知識と教養」「豊かな情操と道徳心」「能力を伸ばし、創造性を培い」「自律の精神」などが挙げられています。

  また、PISAでは「社会の形成に参画し、その発展に寄与できる能力」を調査することを目的としていますが、それについても第二条で明確に言及されています。

  さらに「環境教育の必要性」についても第二条に明確に表現されている点も大きな変化です。
  また、学校教育法では「義務教育」と「生涯教育」を意識した表現になっており、「学校内外における社会的活動」を通じて「社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度」の育成や「生命及び自然を尊重する精神」「環境の保全に寄与する態度」の育成について、明確に表現されています。

  学習指導要領の改訂では、「基礎的・基本的な知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力等の育成」に力を入れています。また、「習得・活用・探究」についても明確に示され、「言語活動」や「体験活動」の必要性についても大きくとりあげています。



【2008年2月2日号】

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