教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞

News

TOP教育マルチメディア>ニュース

■来る教員1人一台PC時代

 スペックよりも仕様が鍵

社団法人日本教育工学振興会は2月、各地で情報教育対応教員研修全国セミナーを開催した。3日、ベルサール九段(東京)では「安全・安心な校務環境をめざして」をテーマに「教員1人一台時代のICT活用フォーラム」(協力 Sky株式会社)を実施、文部科学省による基調講演や、実践報告「教員1人に一台のコンピュータで何が変わるか」(司会 メディア教育開発センター助教授・堀田龍也氏)などが行われ、会場は約200名の教育関係者で埋まった。

 「教員1人一台時代のIT活用プロジェクト」(協力 Sky株式会社)は堀田助教授が主査を務め、教育委員会や現場の教職員が共同研究に取り組んできたもの。会場では1人一台PC整備を前向きに捉えて学校のメリットにするためにはどのように整備を進めると良いのか、また安心・安全な職場環境を実現するにはどのような仕組みをどう取り入れ、どんなシステムを導入すれば良いのかを議論。

 実践報告では堀田龍也氏を司会に戸来忠雄教頭(青森県八戸市立市川中学校)、池田宗一教諭(鳥取県立米子西高等学校)、中川斉史教諭(徳島県三好市立池田小学校)が発表を行った。


◇   ◇


 「先生方は自分の道具にこだわりを持っている。1人一台PCが受け入れられるか否かは、PCのスペックではなく仕様で決まる」と述べるのは中川先生。同市の池田地域(合併前=池田町)では平成14年9月、全小中学校(小10、中2校)の教職員へノートPC約150台を配布、いち早く教員1人一台PC環境を整えた。

 「学校の先生は様々なソフトを短時間に使用するのが特徴。校務は多様なアプリケーションに支えられており、そうした利用法は一般行政の考え方とは異なる。他の自治体の話を聞くと、セキュリティの名の下に学習指導用の仕様が犠牲になっていることも多いようだ」

 そこで同地域では、1、校務用には暗号化やアクセス制御などセキュリティ対策と「いつでもどこでも出せる、すぐに作れる」利便性、2、教室児童用には、フィルタリングやリカバリーなどのアクセス制御や管理ソフト、3、学習指導用には、ツールのインストールができ、動画クリップやグーグルアース等が使え、各種教室へ持ち運べる、といった観点から仕様を作成した。様々なアプリケーションがすぐに使えるため抵抗なく利用されている。

 また、作成データを「とにかく校内サーバの共有フォルダに入れておく」ことが習慣化されている同校での利用例から「あらかじめユーザを想定し、共有フォルダをどのように構成、運用するかも大切」と説明した。

 1人一台PCのメリットについて中川先生は「同じ環境なので隣の先生のマネをすれば良く、教え合いができる。教員1人一台の流れは、喜ばしいことだが手放しでは喜べない。教育現場と行政の立場の違いで使い方がずいぶん異なる。教員は使用イメージを持ち、何のために導入するのかを考えて現場の使い方をしっかり行政の側に伝える必要がある。また行政側は現場の使い方をじっくり見ることが大切だ。その両方がないとうまくいかないだろう」と語った。

教師を本来業務に専念させるシステムをアウトソーシングも必要
 事例発表の終わりに堀田助教授は「校務が便利になるというが、従来の校務の見直しをせずに導入しても便利にはならない。見かけ上の負担は軽減されても誰かに負担のしわ寄せがあるかもしれない。従来業務を一度に変えると効率が悪くなる。教育現場と行政が連携を保って段階を経た変革を考えなくてはいけない」とまとめ、ネットワーク管理など教師の本来業務でない作業はアウトソーシングの必要があり、それが難しい自治体では代わりに管理するシステムが必要になると語った。