ネットに対応、フル生産中のハイパーキューブNet |
スズキ教育ソフト 社長 横幕 陸氏 |
●やさしさ盛込む ハイパーキューブを中心に教育現場に多くの導入実績を誇るスズキ教育ソフトの横幕社長に、ソフト開発の基本姿勢や新しい統合ソフトの特徴についてお話をうかがった。 −昨年12月8日にインターネットに対応した新しい統合ソフト「ハイパーキューブNet」を発売されましたが、その開発の基本姿勢について。
「国によるコンピュータ整備も、第3次の整備に入っているが、平成2年に発売した初代ハイパーキューブは教育目標を達成するためにコンピュータを道具として使うソフトとして開発した。必要最低限の基本的なツールとして、ワープロ、表計算、データベース、図形処理といった教育用のやさしい基本的応用ソフトウェアを統合したものである。その役割は、道具ありきではなく、まずは教育目標がある、そして、その課題解決に活用してもらうという開発姿勢は新製品の「ハイパーキューブNet」にも受け継がれている。初代のハイパーキューブにも、表計算の部分では「合計」や「平均」などの日本語関数を搭載し、グラフもストレスなく表示されるように子どもたちにとって不必要な機能は削ぎ落とした。表計算に限らず、どのソフトでもそのような配慮をしてきたが、その目的は限られた時間の中で、コンピュータの処理スピードの問題や、教育的に意味のない観点から操作に戸惑って無駄に時間が過ぎていくようなことがないようにといった心のやさしさが盛り込まれている。そして、大人向けでもめったに使わない機能は盛り込まず、教育用という目線で全部作り上げていった。
新発売の「ハイパーキューブNet」も、そうした気持ちを踏襲して開発した。その時代にあった子どもたちにやさしい道具を作っていくのが、わが社のソフト作りのベースである。「ハイパーキューブNet」は、小学校は12本、中学校はプログラミング用の「キューブベーシック」を加え、13本のソフトが統合されている。今後インターネットを使った学習が進むが現状では多くの学校の接続環境はダイアルアップ接続の細い線。そうした学校でも最低限使えるようにと、ソフトを開発している」
●全国各地で検証 −それは、かなり実証されたのでしょうか。「ええ。全国各地の様々な環境で検証している。さらに、400台のパソコンから一斉に接続するという負荷試験もしている。細い回線の学校でもレスポンスは悪いながらも、絵付きチャットやミーティングがネットワークを介してできるようにした。今後、インフラが整備されれば、難なく情報収集や共同学習ができる機能を、統合ソフトの中に用意している」 −インターネットへの対応で、最も苦労したのはどういう点でしょうか。「自治体によって接続環境がものすごく違う点である。そして、校内環境にメニューソフトやシステム保護ソフトなど、いろいろな他社のネットワーク用のソフトが混在している。昨年3月の発売を前にした発表以来、細い回線でも使えるようにと、そうした学校環境での実地検証にかなりの時間がかかった。従って、当社が目線にしているのは高機能の機器が導入されている学校よりは一般的な環境の学校でお使いいただけるソフト。そうして開発した子どもにとってやさしいソフトは、先生にとってもやさしい。やさしければ、先生にも使っていただける」 −今回のソフトの機能の中で最も大きな特徴は。「課題解決のためにネットワークを介して遠隔地の学校とリアルタイムに意見交換や討論会ができる「キューブミーティング」と、共同で作品作りができる「キューブページ」。ページは、ホワイトシート型の編集ソフトで、そこで調べた写真や文字、グラフを貼り付けてプレゼンテーションしたり、「書き出し」ボタンを押すと、HTML形式にしてブラウザで見ることができる。ミーティングは、遠隔で意見を交換し合える。そして、もう一つは、「ポケット」というファイル管理用の機能が付属している。個人ごとやグループごとに「ポケット」を作っておけば、普通教室やオープンスペースからでもネットワークを介してIDとパスワードで自分の使える環境を引き出すことができるし、自分の保存したファイルを見つけるためにファイルサーバの中を探し回ることもない。今、先生方の最も大きな悩みは、ユーザー管理システムの保守である。その悩みに答えるために、特別なサーバーがなくても、クライアント兼用のパソコンにインストールすることで、稼働することができるようにしている」 −ユーザーの反応はどうですか。「昨年3月の発表以来、既に10万本にものぼるご予約をいただき、今、フル生産に入っている。前のバージョンをお使いの学校では、さらに使いやすくなったなあという評価や、インターネットの機能を十分生かして、書いたものを自由に編集してボタン一つでホームページ書き出しができる。できたものを校内展示会で見せたり、協力校に送って意見交換をすることが、インフラさえ整えば抵抗なくできるという体感が子どもたちにもできたという話を頂いている。
もう一つ、わが社が考えているのは、Web上の展開で教育用ポータルサイトの構築。先生のコーナーと子どもたちのコーナー、それに従来の製品紹介のコーナーと3つのコーナーを平成13年春にリニューアルオープンする。先生用のサイトでは活用事例を約300例掲載して今後も引き続き増やす予定である。また、共同学習の相手校探しのお手伝いもし、遠隔学習の中継用としてレンタルサーバーをお貸しするシステムもスタートする」
●人のつながりがベース −教育ソフトメーカーとして、研究スタートから20年目になります。老舗ですが、振り返ってどんな感慨を。「先生方と新しい時代の道具を一緒に作り続けてあっという間だった。もともと私はコンピュータの技術者ではなく、どんなものを作ったらいいか先生方にお聞きするしかなかった。作ったら学校に持っていって先生方にお聞きする。そんな繰り返しだった。本当に産学協同で一緒にやってきた。先生方とご一緒に、先生方のお考えを私どもが作らせていただく。コネクティビティというか、それが私の信条である。そして、今はMS−DOSのころからお世話になった先生方が校長先生や教育委員会の指導主事になられたりしている。それぞれの立場から総合的に評価やアドバイスを頂けるノウハウがずっしりとある。わが社の製品が支持を得ているのは、ヒューマンネットワークのおかげで、苦労した、喜んだ、という人間のつながりがベース。だから、どんなに忙しくても、私も極力、現場に出向いている」 −ハイパーキューブNetを学校でどう使ってもらいたいとお考えですか。「本当に鉛筆や絵の具のように、道具の一つとして気楽にそれぞれのシーンで使ってもらいたい。シンプルイズベストで作っている。ロースペックのマシーンでも13本のソフトがサクサクと動くことを体感してもらいたい」
−スズキ教育ソフトをこれからどのような会社にしたいですか。 「ネットワークがすべての学校で使えるようになるには、2003年ぐらいまでかかるだろうが、インターネットの影の部分や情報のコミュニケーションのあり方を先生方と一緒に勉強しながら、次の時代の新しい教育のために役立つ道具を探し出して作っていきたい」
(2001年1月1日号より)
|