幼児用やネット対応のロゴライターも開発 |
ロゴジャパン 社長 鶴 孝之氏 |
●総合的学習にも使える 1980年の設立後、一貫して教育用コンピュータ言語「ロゴ」の普及に努めてこられた鶴孝之社長に、その効果や今後の展開についてお話をうかがった。 −「ロゴ」を教育現場で活用する教育的効果はどういうものでしょうか。「ものの考え方をいかに育て上げていくかが大きな教育課題であると思っている。その課題をクリアするために、コンピュータを活用できないか、と我々は考えた。コンピュータはソフトがなければただの箱である。このコンピュータに命令するプログラムを構築することを子どもたちが経験することによって、幼児が言葉を覚えるのと同じように、ものの考え方のアルゴリズムを作っていくことができるならば、非常にいいだろう。そういう言語はないだろうか、というのが我々の出発点だった。認知心理学では、ただの知識を使える知識と区別するために、認知という言葉を使っている。その認知の確立の基本は試行錯誤による経験の蓄積である。そういうアルゴリズム、認知を作り上げていくということを体験できる世界を児童生徒に与えてみたい。それをやってみようというのが、ロゴの基本的な考え方である。子どもたちには、まず何をしたいか。そのためには、何が必要なのか。意図するように自由にカメを動かしながらそうしたことを考えてもらいたい」 −今、学校教育では総合的な学習の時間や各教科での調べ学習で、課題解決力を育てようとしていますが、プログラミングで、そうした素地が養われるということでしょうか。「そうです。理科や社会、算数・数学、国語でも、ものの考え方の要素は使えるはずだ。いろいろと試行錯誤して新しい自分のものを構築していくことが総合的学習の基礎ではないかと私は思っている。プログラミングでそうしたものの考え方を自然に身につけるということは、非常に大きな能力の育成となる。しかし、プログラムを作るというようなことを子どもたちが喜んですることから始まる。そこで、レゴ社(本社・デンマーク)と提携して実施しているのが、レゴというブロックの玩具を使ったセットを作りコンピュータで制御させること。
私の僚友である、MIT(マサチューセッツ工科大学)のシーモア・パパードが始めた実験を私が日本で試みていることになるが、ロゴでコンピュータのプログラムを作りあげていくという作業と、レゴのブロックを積みあげて車などを作るという作業とは、ものの考え方が同じであり、この作業を支援する為に、ブロックに穴を開けてシャフトをつける、モーターをつける、光のセンサーをつける、ということも織り込んだレゴの教育用セットが出来上がった。総合的な学習の中でレゴで子どもたちにモチベーションを持たせて、何かをやらせてみてほしい。そして無機的な世界ではなく、有機的な世界の中でものを構成する能力を養ってほしいと思っている」
●マルチメディア機能を先取り −ロゴライターの最新版については、マルチメディア機能も高いようですが。
「もともとロゴライターは、8ビット時代からマルチメディア機能、子どもたちが興味を示す色、動き、音の3要素は最初から入っていました。しかし、8ビットの頃は外から音を取り込むことができなかったので、ビープ音を周波数変換で音源を作った。色もRGBの3原色を基本に16色を自由に使えるようにした。
機械が進歩していくにつれて、音も外から取り込めるように、絵も自分が描かなくても外から取り込めるようになった。そうした機能も全部入れて、さらに豊かな機能を持つに至ったのが現在のロゴライターである。最新版のロゴライターは、そうしたマルチメディア機能を現代に合わせて一層ブラッシュアップし、またどんなOSでもどんなハードでも子どもたちが自分で作ったデータは動くように考えて作っている」 −最近のユーザーの反応はいかがですか。
「最近は、みなさんの関心がITの方に向いている。残念
●教育フェアに多かった反響 −昨年11月に行われたNHKの教育フェアにも出展されていましたが、反響はどうでしたか。「子どもたちが非常に喜んでいた。なんとか自分の力で動かしてみたいという意欲をもったようだ。来場者の多くは、一般の方だったようだが、保護者に与えた印象は強く根を広げていくにはいい機会だった。あのイベントの後、出展依頼という反響がかなりある。その1つに12月31日から1月2日にかけて、山形で産業科学館が開館するので、出展してくれないかという嬉しいが大変な申し入れもあった。そして、次は、家庭でコンピュータが普及してきたら、家庭でも子どもたちのものの考え方を養成するため、今年3月ごろにはロゴポップという幼稚園の生徒と就学前の子どもたち向けのロゴを発表するつもりである」 −21世紀にロゴジャパンとして、どう望んでいきたいとお考えですか。「21世紀を展望するのは大変で、コンピュータの進歩もものすごいものがあると思うが、ロゴジャパンはあくまでもコンピュータを教育の世界の中でどう活用できるかを探るのが目的である。ロゴライターをさらにブラッシュアップしていくのはもちろん、さらにコンピュータを活用して子どもたちのために役立つものがあるならば、新しい面での開発もしていきたいと考えている」
ロゴジャパンは、道路の区画整理のため、昨年12月、東京都中央区東日本橋2−4−1に移転した。電話03・5823・6571、FAX03・5823・6627。 |
(2001年1月1日号より)
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