子どもが“知る喜び”感じるソフトを提供し続けたい データポップ
社長 深山 照氏


ソフト文化への影響
 良質のソフトを長年にわたり開発し続けているデータポップ社社長、深山照氏にお話を伺った。同氏は日本教育ソフト協議会の理事長も務める。
 −インターネットが学校にも急速に普及しつつあります。この状況をソフトメーカーとしてどうとらえて、ソフト開発に生かしていこうと考えられていますか。「韓国では、今年中に光ファイバーを全ての学校に導入すると聞いた。しかし、日本は2005年を目標にしていて、韓国より遅れている。  今の状況を見ていると、一気に学習に十分活用できるレベルのインターネット環境が学校に整備されることはないだろう。世界的には5〜6年遅れているが、我々ソフトメーカーは現状に合わせて、Web対応、校内LAN対応、そして単体対応と柔軟に対応していかなければならない。第3の産業革命と言われるインターネットは、ソフト文化にも多大なる影響を及ぼすであろうが、あくまで1つのインフラで、大切なのは中身である。それを踏まえて、コンピュータの特性を生かした双方向性のあるソフトを提供していきたい」

日常的な活用を
 −今年1年、マルチメディア統合ソフト「サイバーポップ」は学校にどう受け入れられましたか。「かなりの自治体に導入された。総合的な学習に使えるツールとして非常にいい評価を得ていて、一目ぼれ(一目ソフトを見て導入を決定)される学校が多い。機能の異なるいろいろなソフトが1つのパックに入っているのではなくて、サイバーポップそのものが1つの統合ソフトなので、使い勝手がよく動作も速い。特に共同学習用の「同時編集機能」は、まだ世界にも類のないコラボレーションのツールとして評価が非常に高い。コンピュータ教室内での同時編集や校内ネットワークを利用した異なるクラス間の同時編集、またインターネットを介して遠隔地の学校との同時編集にも使っていただける。共通の課題について共同学習を実施すれば、協調性も養われる。また、教科対応のソフトも科学の不思議シリーズ他をラインナップしていきたい。先生方には、是非研究授業のみならず、もっと日常的にパソコンやインターネットを活用してもらい、常日頃の教育の課題や成果をその中に盛り込んで欲しい。さらに、ソフトや機器を導入したあとのフォローが以前にも増して求められる時代になっている。先生方はお忙しいので、NPO(民間特定非営利法人)などの方にご協力いただけるよう、そうした方々のパワーも活用できるような組織作りが必要である。定年退職しても元気な方々は沢山おられる。こうした層の人に活躍してもらわない手はない」

モジュール化してWebに
 −2001年はデータポップ社としてどんな展開を 「先ほど話したが、ネットワーク時代に対応し、子どもたちがいつでもどこでも学習できるように、インターネット上でソフトをモジュール化して載せていくことを考えている。同時に、まだまだ校内LANが整備されている学校は少なく、インターネットへの接続環境も満足できるものではないので、スタンドアロンでも使える事例も提案しながら良質のソフトを提供していきたい。  当社は今年で19年目を迎えるが、常に先生方の意見を取り入れ、新しい教育内容にいち早く対応したソフトを開発してきた。以前開発した統合ソフト「マム」もその一例であり、ネットワークの普及を見越した「マムトーク(通信機能)」、「マムプロ(プログラミング機能)」を搭載していた。今後は、インターネット時代に対応したソフトはもちろんのこと、基礎・基本の確実な定着が新たに問われている時代であり、ただ基礎・基本が覚えられるソフトを作るだけでなく、どこでつまずいているのかを自分で理解し応用力が身につけられるようなソフト、また課題解決力や思考力を育てるソフトなどを作っていきたい。1月7日から13日まで英国に行くことになった。小・中学校・教員研修センター、カリキュラム研究所の視察と、コンピュータ教育総合展BETTおよび併設の学校関係者によるセミナーへの参加という企画に、世界中の国々から1〜2名を招待するというものである。想い起こしてみると、英国には1986年、1992年と2回コンピュータ教育の視察団の一員として出かけて以来、久方振りの視察訪問である。当時、英国は国を挙げてコンピュータ活用のカリキュラム作り、教員研修、フォロー要員体制の実施など、大変教育内容を重視した施策を早くから実施しており、教育内容はわが国のそれに近いものがあったので、教育ソフト専門メーカーとして大変興味深く参考になる部分があった。また、当初から三位一体(ハード、ソフト、教員研修)という考え方には、大変羨ましく思ったことも鮮明に記憶している。 一方米国では、インターネットはまだ影も形もなかったが、コンピュータを学校へ普及させるという施策は、先生のレベルに問題があるという動機から、始まっていた。その後ゴア副大統領が、“情報スーパーハイウェイ”なるものをぶちあげ、一気に米国が主導権を握ることになり、またインターネットが機を同じくして教育にも普及し、相乗効果は目を見張るものがあった。その間英国はなりを潜めているように見えたが、中身を重視する彼らが、その後どのように進展してきたかを、この目で見てきたい。また、20か国近い国々から代表が集まる面白い機会なので情報交換して、わが国の現状を紹介し、わが国の情報教育の世界的レベル、課題等も探ってきたい」
 −いよいよ21世紀になりました。21世紀にどう臨まれるお考えですか。「知力で世界に勝負していかなければならないわが国の子どもたちの学力低下が危惧されている今こそ、単に企業の利益追求に追われることなく、子どもたちが“知ることの喜び”を感じるようなソフトを提供し続けたい」

(2001年1月1日号より)