コンピュータを活用した
     英語教育を考える

 関東地区小・中・高・大連携英語教育情報化研究会の設立準備を意図したシンポジウム「コンピュータを活用した英語教育を考える」が同シンポジウム実行委員会(委員長・原田康也早稲田大学教授)の主催で早稲田大学西早稲田キャンパスで開催。第1部理論編、第2部実践編の2部構成で、情報技術を活用した新しい英語教育の在り方を探った。シンポジウムには当初予想を大幅に上回る約250人が参加し、情報技術を教科教育にいかに活用するかについて関心の高さを示した。理論編では、三省堂英語教科書編集室編集長の伊藤悦裕氏が新学習指導要領の内容について「実践的コミュニケーション能力の育成や知識をもつだけでなく、運用する能力が求められている。また、音声が重視されているだけでなくどう表現したら良いか自分で考える表現するという高度な力も求められている」と説明。「しかし、文型、語彙の削減幅は少ない。一方、音声については増えている。学習時間は週4時間から3時間にならざるおえないという問題がある」と実践上の課題を指摘した。また、株式会社アルクのマービン・ルイスチュートリアルプログラムトレーナーは、会話能力育成講座における教師の役割を講義。早稲田大学法学部の原田康也教授は、インターネットや情報技術を活用した学習モデルや学習到達度測定への活用、電話による口語表現能力テスト、Webによる学習サイトなどを紹介した。そして、岩崎言語教育プログラム開発の岩崎美紀子代表は、初期英語教育(就学前及び小学校)における日本人のための教授法を確立すべきとして、英語教育に関して、いくつかの疑問を投げかけた。まず、「Nativeと同じレベルになれる」のは無理で、「同じになる必要」はない。また、文法が軽視されていることについて、「作文に必要な知識」は文法、「文法は自然と身につく?」かと言えばつかない、「ドリル練習は不必要?」は間違いで、流暢になるためには不可欠、エンターティメント性は必要だが、娯楽性と効果は反比例すると指摘した。そして、日本語と英語は難しい箇所が異なるので、学習順序の見直し、日常会話にポイントを置いた編成、文法と会話の融合などを提唱した。
 第2部では、校種別に実践事例を発表。玉川学園小学部の小川恵子先生は、「子どもたちの興味の持てる内容から習っている」と約40人の大学生ボランティアの協力、テレビ会議による海外との交流、総合的な学習と英語科との連携、などを発表した。桐蔭学園中学校の渡邉剛志先生は、週1回の英作文の授業をすべてパソコン教室で行い、生徒が書いた英作文をファイルメーカーというソフトで、Webページにした。右側に先生がコメントをつけられるようにし、他の生徒も見られるようにしたところ、生徒のモチベーションが高まったと発表した。私立富士見中学校の池上稔先生は、パソコン室を使えない環境の中で、模擬Eメールの授業を実施した。これは、Eメールの画面を紙に印刷して、生徒に題名や内容を書かせて、生徒同士交換させるもので、生徒に非常に好評だった。早稲田大学本庄高等学院の高山正弘先生は、コンピュータやインターネットによりライティング力を高める指導方法を考察した。また、名古屋市立西陵商業高校の影戸誠先生は、様々な形で生徒の心を揺さぶり、情報技術を使って韓国の生徒などとテレビ会議で交流し、実際に英語を使う中で体験的に英語力を育てる実践を語った。

(2001年1月1日号より)