不登校児とメールの交換

教育センターと家庭を結ぶ
埼玉県所沢市立教育センター
秦野市教育研究所

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パソコンを貸し出して
 所沢市教育センターでは、平成10・11年度に「マルチメディアを活用した登校拒否児の補充指導の在り方についての調査研究」の委嘱を受け、予算の中から児童・生徒に貸し出すレンタル用のノートパソコン5台を用意した。パソコンは、不登校児を持つ家庭とのメールのやりとりなどに活用してきた。
 いわゆる「引きこもり」といわれる子どもたちが、家庭にパソコンが入ることで興味関心が生まれ、それを糸口に家族・親子の会話が増えるなどの反応が見られたという。
 電子メールでの交流は、同センターの指導主事2名が担当。貸し出されるノートパソコンには、市販の学習ソフトをインストールしてあり、興味がある子どもにはそのソフトでの自学自習を促していったという。
 パソコンを貸し出した不登校児の事例では、子どもが貸し出されたパソコンを利用して絵を書き、その絵を家族の年賀状に利用することで、以前よりも家族間の交流が生まれたという。家族の中で役に立つという自信がきっかけになり、徐々に学校にももどるようになった。
 パソコンを使えるようになることで、不登校の子どもが自信を持つきっかけになっているようだ。
 また、同センターにはすでに教育ネットワークがあり、各学校と教育センター、家庭とを結んだ相談活動も行っている。

秦野市教育研究所
 秦野市教育研究所は、平成10年度から2年間委嘱を受けてきたが、今回さらに2年延長し13年度まで研究を続けることとなった。
 同研究所には、不登校の子どもや精神不安を持つ子どもなどに対応する、適応指導教室と相談指導教室がある。ここでは、子どもたちが教室へ通うことによる直接支援が行われている。また、パソコンの貸し出しや通信費用の負担を同研究所で行い、パソコンでのコミュニケーションに活用。
 今回の研究では、主に家庭にひきこもりがちな子どもの支援の手段として実績を上げている。
 引きこもりの子どもには、対人関係に不安を持ち、コミュニケーションが上手くとれずに劣等感を抱いている子どもだった。パソコンを貸し出した子どもは、研究所職員や担任の教師など、顔見知りの人とのメール交換を行った。子どもたちは、メールで日常の生活を綴ったり、学校の様子を担任に聞くこともあり、生徒と教師・職員との交換日記のようになっていったという。
 不登校の子どもたちは、電子メールで自分が相手に伝えたいことを書き、読み直し、訂正していく。これが、模擬的なカウンセリングとして効果がみられることもあるという。
 ある中学生は、それまで父親との会話が無かったのだが、父親がパソコン関連の仕事をしていたことで会話が広がり、父親が身近な存在になって会話が増えていった。同時に家庭内の様子に変化が見られた。
 また、同研究所の適応教室などに通う子どもたちもパソコンを使うことができる。同研究所には心理学などを学ぶ大学生のボランティアが来ており、子どもたちと隣り合って座り、パソコンの操作を教えたりしながら交流をする機会もある。直接対話よりも、画面をお互いに並んで見ながらの会話なので、対人恐怖を抱えている子どもでも、自然に心を開くようになるようだ。
 不登校児への支援は、家庭訪問や適応教室などでの直接的な支援が中心だが、パソコンやインターネットを支援の一つとして捉え、子どもの興味にまかせ、無理のない流れの中で観察しているのが現状だという。
 今後は、不登校の子どもたちといった特定のグループ間でメーリングリストを利用した交流や、他市の適応教室の子どもたちとの交流に、コンピュータを活用していきたいという。また、支援者同士が話し合える場をインターネット上で利用できることも考えている。
 

 (教育家庭新聞2000年6月3日号)


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