実り豊かな教育へ

新たな千年紀に1歩

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 2002年から小中学校で、新学習指導要領が本格実施される(高校は2003年から)。それに伴い2000年度から、移行措置が適用される。新設された「総合的な学習の時間」の実施に向けて、既に各学校で様々な取り組みが行われつつある。例示されている国際理解、情報、環境、健康・福祉の横断的な課題、地域や学校の特色に応じた課題など、その取り組むテーマは様々になるだろうが、21世紀の社会をより良く生きる力を身に付けるため、小学校段階から自ら課題を見つけて判断する、問題解決的な学習が行われることになる。

 全く新しい時間であり、児童・生徒の思考・学習方法や体験をブラッシュアップする方法として、期待は大きい。
 その基盤となるのは、情報を収集・加工し表現し伝達する能力などの情報教育である。教育の場に機械が介在するのはおかしい、などの日本の伝統的な教育観の中で、メディアを活用した教育は、ともすると受け入れられにくい側面があった。しかし、インターネットなどネットワーク・メディアの活用により、人的な交流が促進されることは、100校プロジェクト以来、先進的な教師間の交流により証明されている。メディアは心と心の交流を促進する。一方で有害情報などマイナス面もあるが、問題は利用の仕方である。
 小中高での総合的な学習の時間や各教科でのコンピュータの利用、「情報とコンピュータ」(中学校)、「情報」(高校)の必修化など体系化もなされている。
 日本の学校のコンピュータの設置率は、平成11年3月現在で、全体で98・6%。小学校でも97・7%と、平成6年の77・7%、8年の90・7%から加速度的に上昇してきているが、設置台数やLANの設置率(小学校のLAN設置率は教室内LANだけの場合を含め27・7%と低い)を考えると、まだまだ少ない。
 「環境が整ってくれば、自然と教師も使うようになる」とはある校長先生の弁。
 いよいよ2000年。この世紀に我々はどんな展望を持ちうるのだろうか。子は社会の反映。子どもたちの未来のために確かな1歩を踏み出そう。

【東村山市立化成小学校】ネットワーク利用し児童がディベート 
 「かかわりを大切にする児童の育成」をテーマに総合的な学習の研究に取り組んでいる東京都東村山市立化成小学校(竹村保俊校長、540人)で昨年12月、国際理解や福祉、情報に関わる公開授業が行われた。
 4年合同「仲良くなりたいな 外国の人と」では、アメリカやイギリス、カナダ、韓国、中国、などの外国人教育ボランティアが、それぞれスペースを作って、自国の文化や生活を紹介。子どもたちがグループで順に好みの各スペースを回る形式で、海外の歌やお話を教わった。
 5年生のクラスでは、チャット用のソフト「コミュニケーションボード」(スズキ教育ソフトの試作ソフト)を使って、教室内ネットワークを利用して4テーマについて同時進行でディベートをした。
 20台のコンピュータを4グループに分け、グループ内だけでチャットができるように設定。テーマは、「ガソリン自動車は、必要である」「学校は小・中一緒がよい」「土曜日にも学校に行く日があった方がよい」「二千円札は必要ない」という身近なテーマ。

 画面上部に「2000円札は必要だと思います。なぜかというと・・」「2000円札は必要ないと思います。その理由は・・」と賛成、反対双方の立論が大文字で出、それに関し子どもたちが打ちこんだ意見が画面下部に表れるようになっている。
 「土曜日は休みになった方がいいと思います。思いっきり遊べるから」「今のままでも土曜日の休みはあるので、遊べると思う」
 「記念を作った方がいいきかいになります」「記念にするならお金じゃなくてもいい」
 それぞれの子どもたちが、自分の考えを打ちこみ、最後に司会役の子どもが勝ち負けの判定をした。
 考え、意見を戦わせる練習になるようだった。
 公開授業後、役割を交換し、またコンピュータを使わない普通のディベートも行っている。
【台東区立忍岡中学校】プログラミング体得女子生徒も関心高く
 自分の作ったプログラムで実際に車を走らせてみよう−−ーインターネットにもCATV回線で高速に接続している東京都台東区立忍岡中学校(向平泱校長)で、マルチメディア統合ソフト「CyberPOP(サイバーポップ)」(データポップ社)を使ったプログラミング学習の授業が昨年12月、3年生の情報基礎の時間に行われた。

 6時間扱いの単元で、まず、プログラミングへの興味を高めるために、先生があらかじめ用意された「VBScriptによるプログラミング学習」というプリント教材を見ながら、同ソフトの「・スクリプト・を編集」ボタンであらかじめ入力されたサンプルプログラムの中の数字を変更し、「スライドショー開始」ボタンでアニメーションで車を走らせてみる。
 starttimer(10)と入力されている数字の部分を、課題にそって変更すると、車の速度が変わるのが分かる。
 「あっ、速い」(10↓2に変更)、「すご〜い、遅い」(10↓500に変更)
 「私はこのスピードがいい」などと言いながら、女子生徒も楽しみながらプログラムについて理解していく。
 要所要所で「start−timerは、コンピュータにこれからタイマーを働かせると命令をするところ。(500)は500ミリ秒かかるという意味で、数字を増やせば増やすほど同じ距離を移動するのに時間がかかる」などと技術科の長島岳紀先生が分かりやすく説明していく。
 また、算数の座標とパソコンのモニターのドットを関連付けて、モニター上での位置を表す命令の意味を理解しやすく説明したり、家庭科の萩野谷肇子先生もサポートしているのが印象的だった。
 サンプルプログラムの中の言語の意味を、2000年問題など現実と関連させて説明すると、生徒は真剣に聞いている。
 最終的には好きな道路をデザインして、画面上で車を好みのスピードで走らせ、次いでパソコンにミニカーを接続して走らせてみる。最後にネットワークを利用して、複数の生徒が同じ作品をコラボレーションできる、同ソフトの「同時編集機能」でプログラムの共同作成にもチャレンジしたい、という。
 最後にこのソフトを使った感想を先生に尋ねた。「この度の指導要領の改訂の内容を良く考えて作られたソフトで、スクリプトで作った簡単なプログラムの意味がマルチメディア機能で制作したものを制御して、即同画面で確かめられるのが良い」とのこと。
(教育家庭新聞2000年1月1日号)