中学生が体験聞く

発展途上国の実態学ぶ
板橋区立加賀中学校

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 本や資料で調べた開発途上国の実態を、現地の実態に詳しい人の話を聞いてさらに勉強しようという趣旨の授業が、東京・板橋区立加賀中学校(高波宏光校長)3年生の選択社会で行われた。講師に招かれたのは、国際協力事業団(JICA)の元海外協力隊員。アフリカ・ガーナの学校の様子や、「ものは少ないが、楽しく暮らしている」という暮らしぶりを生の体験として語った。その内容に生徒たちは興味深く聞き入っていた。
       
 選択社会の授業は週1回、受講する生徒は30人。講演は1月19日午後1時35分から、「開発途上国の教育について」と題して同校図書室で行われた。講師は国際協力センターの引場望さんで、平成9年から2年間、ガーナの首都近郊にあるスエドロ実業高校に理科教師として派遣された経験を持つ。
 生徒たちは3年生になってから、開発途上国の問題を各自がテーマを決めて学んできたところ。「書物だけではもうひとつ実感がつかめなかった部分があり、物足りなさがあった」と担当の山岡裕基子先生。講演では引場さんが2年間勤務した高校や町の様子を、ビデオとスチール写真を交えて紹介された。
 「皆さんはアフリカというとどんなイメージを持っていますか」という問いかけに、生徒からは「暑いところ」「動物がたくさんいる」などの回答。ガーナはアフリカ大陸西海岸の中央近くで、熱帯雨林に属し、人口は約1800万人。イギリスの植民地だったことから、英語が公用語で約半数がクリスチャン。現在の教育制度はほぼ日本と同様だが、小学校就学率は50%程度。人口は爆発的に増加している時期で、食料問題など新たな課題を生んでいることなど、講演はガーナの簡単な紹介から始まった。

 勤務した高校は公立高校で、教育費は国家からまかなわれているが、教材・器具など不足するものが多いという。引場さんの担当する理科の実験は、日本ならば小学校レベルの簡単な実験でも、はじめて体験する生徒ばかり。教育のレベルが低いのではなく、学校予算が十分ではないので、地方の小・中学校までは備品が整わないため。生徒たちは大喜びで実験に取り組んだそうだ。
 「高校生なのにアルコールランプの扱い方も不慣れでした」、「時々ガス、水道が止まるので、実験中は気を配りました」などが困ったこと。
 「学校には青のボールペン1本、ノート1冊だけを持って登校。トタン屋根の校舎。農業実習なのに長靴を持っていない。電話がないので私は、日本のJICA本部と無線機で交信しました」、「私たちの感覚ならば、ものがないことは・気の毒なこと・。でも生徒も現地の人たちも、それを特に不便ともせず、ないなりに工夫し、楽しく暮らしていました」
 「日本の常識がガーナの常識ではない場面にたくさん出会いました。そのときどうしたか。私はまず、ガーナのやり方をやって、次に日本のやり方を知ってもらう。そうすることでお互いに理解し合えると思っています」
 講演後には生徒から次々に質問の手が上がったが、授業時間は終了となり名残惜しそうだった。
 この講演を受けて今後の授業では、感想や意見を討論し、質問などのポイントをまとめ、電子メールで引場さんと意見交換を予定。またインターネットを活用して開発途上国に関する情報収集、現地校との文通なども体験させたいと山岡先生は計画している。
   
 学校や市民の国際理解の学習などに、JICAは専門家や海外協力隊OBの講師派遣をする「JICA・サーモン・キャンペーン・」を実施中。交通費など経費はJICAが負担する。詳細=03・5352・5029(JICA広報課)
(教育家庭新聞2000年1月29日号)