前・後期2テーマで

グループや一人で課題追求

埼玉県越谷市立越ヶ谷小学校

 2002年から始まる新教育課程で、「総合的な学習の時間」が位置づけられた。21世紀の諸課題に対応する新しい学習スタイルの時間として、この時間をどう実践するかが課題となっているなか、いずれも東日本でただ一校の「総合的な学習の時間」に関する平成9・10年度文部省研究開発学校の埼玉県越谷市立越ヶ谷小学校、埼玉県杉戸町立杉戸中学校の実践を紹介する。越ヶ谷小学校は、3年以上の全学年で各学年前・後期2つのテーマ(各25時間)を設定し、・自ら学ぶ・活動を展開。杉戸中学校は一年間(70時間)を通し、異学年構成のELクラスを編成、生徒一人ひとりが一課題を追求するという中学生ならではの活動を展開した。


 「ふれる」→「つかむ」→「調べる」→「まとめる」
 埼玉県越谷市立越ヶ谷小学校(497人、16学級)では、平成9年11月に文部省の研究開発学校の指定を受け3学期から毎週2時間、3年以上の学年で総合的な学習の実践をしている。
 その名はチャレンジタイム。 大きな柱として、 「情報」「国際理解」「環境」「福祉」の4本柱をたて、このもとで学年ごとに前・後期ほぼ2つのテーマを設定。 また、全学年年間8時間のAETによる英会話学習、4、5年ではコンピュータ操作の時間も12時間盛り込んだ。
 「総合的な学習の時間は、 教科にとらわれず子どもたちが自分の力で自主的に、本物と触れ合いながら学ぶ時間」で 「教師の役割は教えるのではなく、子どもたち自ら課題をみつけ、調べたりして、その課題を解決し、まとめ発表するための支援、段取りをすること」だと小林卓校長は言う。
 地域をフィールドに、自分で計画を立て、他との関わりの中で学ぶ時間である。


 学習の過程

↓紙袋を集めて細かく切り、再生紙を作る
 学習の流れは大きく上記の4つ。1テーマ25時間のうち、「ふれる」(3〜4時間)は、学年児童全員で共通体験・共通理解をすすめる時間。「つかむ」(2〜3時間)は、課題をみつけ計画を立てる時間。「調べる」(9〜22時間)で、観察や実験、体験活動を進め、「まとめる」(4〜6時間)で調べ考えたこと等を絵や図、表などにまとめ発表し、互いの学習を交換し合う。
 学年合同で3〜4人の教師がチームを組み、活動を展開。そして、「つかむ」過程で同一の課題を持つ子ども3、4人でグループを作った。
 「ふれる過程がポイントで、できるだけ多くの課題を出させるように工夫し、子どもたちの視野を広げる共通体験を多く設定することを心がけた」と研究主任の堀口千尋先生。
 導入の「ふれる」過程では、必ず3本は共通体験を入れるようにした。地域の人や外部講師の人の話、簡単な実体験、視聴覚資料などの共通体験を重ね、体験ごとに感想や課題表を書く。それを視聴覚室などに張り、子どもたちが比較できるように。自分の課題と他の人の課題の違いやつながり、広がりが分かるような仕組みをとった。
 また、「つかむ」過程では、子どもによってはあまり難しい課題は設定しないようにしたり、進んだ子にはもっとこんなこともできるのでは、と支援した。大きなくくりはあるが、子どもの自主性を尊重し、1人でやりたい子には1人でやらせた。

 テーマごとの子どもたちの課題
                           ↓市が電気自動車を保有していることがわかり体
                            験試乗。
 3年生の前期・情報では、子どもたちが豆記者になって、市役所の職員や伝統工芸の職人、商工会の関係者などを取材。自分たちの郷土について調べ、カメラやビデオ、コンピュータの使い方なども学んでいった。
 4年生の前期・環境では、「自分たちの川・元荒川・について調べよう」の大きなテーマのもと、川にすむ魚や鳥を調べるグループ、元荒川の歴史グループ、クリーン作戦グループ、なぜ川の水は汚れるのかグループ、などそれぞれの課題について、調べまとめていった。
 5年生の前期・国際理解は「見たい 聞きたい みんなのアジア」のもと、料理のグループは、2日間にわたって市内にあるインド料理店に行き、調理場を見学したり、料理の材料やナンの作り方を教えてもらう。また、料理店の人が学校に来て料理を教えてくれた。

 外貨を調べるグループは、、銀行を訪ね大金庫を見学するという日常ではできない体験を。転入生であるフィリピンの女の子を囲むグループは、タガログ語辞典作りをメインに、フィリピンのダンスを習ったりした。
 1テーマの活動時間はほぼ25時間。子どもたちは、手作りの巣箱を自分で選んだ場所にかける、訪問先に電話でアポイントをとる、FAXで質問をする、3、4人のグループでごみ処理場に行って市の職員に質問をする、車椅子でスーパーに買い物に行く、特別擁護老人ホームでボランティアをしたり、お年寄りとゲートボールの交流をする、などの体験を通してさまざまなことを学んだようだ。
 たった1人で学校の花壇や公園の花壇を借り受け、緑を増やそうとした子、自分の犬を盲導犬にするという課題をもった子もいた。
 「どのテーマでもそうだが、必ず地域に教材がある。地域の人に会ったり学校に来てもらえる。訪問する喜びや訪問される感動があるから、この学習を楽しんですることができる」と堀口先生。

 子どもたちは、最後のまとめの段階で、例えば4年・福祉では、町の中で障害のある人のためにどんな工夫がされているか、手話について、車椅子づくりについて、などOHCや実演により発表した。
 「この学習をはじめるに当たって、授業時数を変更する必要があり、学力が低下しないか当初は不安だった。しかし、だんだん活動をしていくうちに子どもたちが変わってきて、意欲的にかつ積極的になり、楽しんで総合的な学習をしているな、ということが親も教師も分かってきた。まだ、1年半だが、この学習を積み重ねていけば、子どもたちに生きる力がついていく、という実感がある」と能登克己教頭。
 国際理解、環境、福祉、情報の4つの領域の部屋があり、学習したことが廊下も含めて掲示されている。

(教育家庭新聞99年4月3日号)