環境マインドを育てる
本質を追求した指導書
環境教育を実践する学校が増えてきているが、この環境教育の本質に切り込んだ「指導書」が話題を呼んでいる。
日本女子大学人間社会学部の佐島群巳教授の「環境マインドを育てる環境教育」(教育出版)がそれ。従来環境教育というと、牛乳パックによる紙作りや廃油から石けんを作るなど実践中心の授業が多かったが、同書では「なぜ環境教育が必要なのか」----その本質について「環境マインド」という言葉から解きほぐしていく。
その環境マインドとは、環境に対する精神的な働きであり意志力であると筆者は強調する。それは@環境のすばらしさに目覚めることA環境の様子に心をとめることB環境の様子に心を用いることC環境の様子に注意(考え)を向けることD環境の痛みに心(気)をかけることE環境問題に対して自分の考えを持つことF環境問題について考え続けること----で、つまり、環境としての自然や社会に対する心くばり、心がまえを持つことであると説明する。
全体を「『環境マインド』とは何か」「感性を磨く環境体験」「環境にかかわる『自分』」「自然の力強さに学ぶ」「生活から環境を見つめる」の5つの章で構成。全編を通じて環境マインドを育てるための「自分」としての在り方、生き方を追究している。
第1章では子どもたちに培いたい「環境マインドの様態」と「育てたい環境マインド」について詳述、以下第2章では環境マインドを育てるための環境とのかかわりについて、子どもが本来もっている鋭い感性を磨く環境体験の必要性を強調、第3章では今我々が環境とのかかわりの中で自分を見つめ、環境にかかわる自分を発見することの大切さを説き、第4章では自然の中でたくましく力強く生きるものを実感させ、自分の生き方を考えるきっかけをさりげなく例示、第5章では自分は環境にどうかかわり、どのように生きていったらよいのかを問いかけている。
同書の大部分は教育家庭新聞に「先生のための環境教育講座」として連載したものの中から、子どもの環境マインドの育成にかかわるものを選んで再構成。これに新たな視点から加筆している。
「今、子どもたちに本来持っている環境を見つめる目、感じる心、環境をよりよいものにしたいという強い意志力と認識力、実践力を育ててやりたいという願いを込めた」と筆者。環境教育を現場で実践する教師には、ぜひ読んでもらいたい好著である。
価格は、2000円(税別)。全国の書店で発売中。
詳細は教育出版03・3238・6965
(教育家庭新聞10月11日号より)