海外の子どもの健康事情
「イギリスのたばこ事情」


 3月14日はイギリスの禁煙Dayだった。イギリスでもタバコは問題になっていて、成人の喫煙者は約1300万人、毎年12万人がタバコが原因で死亡しているという−−肺ガン死の82%、心臓死の25%、気管支炎や気腫による死亡の83%。
 日本ではTタバコは20歳を過ぎてからUだが、イギリスでは喫煙は16歳から認められている。1999年の調査では、12歳の3%が、14歳の12%が、15歳の23%が喫煙者だったという。この年代(11〜15歳)の週あたりの喫煙本数は、男子が36本、女子が30本だそうだ。街を歩いていて、子どもたちがタバコを吸っているのをあまり見かけないが、確実に10代前半の喫煙者は存在しているのだ。
 イギリスでは、地下鉄の駅構内や大学校舎内などでの禁煙、レストランはもちろんパブでさえ分煙が行われているところがあり、禁煙への動きは高い。子どもたちは喫煙やその弊害について小・中学校で学んでいるが、先の数字を見る限りその効果はなかなか期待通りにはいっていない。
 子どもたちがタバコを吸い始めるきっかけはいろいろあるだろうが、親の影響はやはり大きいのではないだろうか。階級(クラス)社会(※1)のイギリスでは、とくに下層のワーキングクラス(労働者階級:ブルーカラー)の成人に喫煙者が多いことが知られている。そのワーキングクラスの子どもたちが多い学校に通った女性によると、彼女の周りで喫煙していた生徒はすべて、親が喫煙者だったそうだ。実際、両親がタバコを吸う子どもは喫煙の可能性が3倍も高まるらしい。
 当然、タバコは子どもの健康に害を与える。タバコを吸う子どもは吸わない子どもに比べて、2倍から6倍の割合で、せきやたんが出やすくなったり、呼吸に問題(ゼーゼーいう、息切れする)を起こしやすくなるという。さらに、受動喫煙(passive smoking)によるぜん息などの病気も子どもたちの間に広がっていて、問題になっている。
 具体的な禁煙対策は、タバコのパッケージの警告(現在、警告付きは6%のみ)やニコチンのパッチやガムの市販によって進められている。大人にとっては禁煙は簡単ではないし、好奇心にとどまらずにTはまってしまったU子どもにとってもタバコをやめるのは困難だ−−11〜15歳のタバコ常用者の72%が「タバコをやめることはできないと思う」といっている。禁煙、そして喫煙防止に向けては、イギリスでもまだまだ改善の余地が残されている。

 (※1)イギリスの階級は、上流階級、中間階級、労働者階級、そして階級外(長期失業者など)で、階級ごとに話し方や生活スタイル、学歴、職業などが異なる傾向にある。


(2001年5月12日号より)