森林を環境教育の教材に 林野庁 方策作り開始
森林を環境教育の・教材・として、積極的に活用してもらおう−−林野庁では、森林を本来の木材生産以外にも、多面的に活用してもらうための方策づくりを開始した。最近では森林を利用して環境教育を実施するケースが増えるなど、森林を有効に活用しようという機運が高まってきていることから、これらを詳しく分析。多くの国民が利用できる森林の整備方針などを探っていくのが目的。来年の2月には最終報告をまとめたいとしている。
施設の設備や指導者の育成
森林の多面的な活用策を検討しているのは、農水相の諮問機関である中央森林審議会(北村昌美会長=山形大学名誉教授)。先月半ばには初会合を開いた。
森林は、地球温暖化の主な原因といわれる二酸化炭素を吸収することからその役割が注目され、最近では全国的に環境教育の場としての活用事例が増えてきた。
同時に2002年から完全学校週5日制が導入されることもあって、子どもたちが自然の大切さに触れたり、林業を通じての職業体験学習に利用されるなど、森林が野外体験教育の場としても見直されてきているのが実情。
また教育以外にも、市民グループが中心となって樹木の枝打ちや間伐を行う、森林づくりのためのボランティア活動も活発化しているほか、「森林との触れ合いを深めよう」と特に中高年を中心とした森林浴やハイキングも盛んになってきている。
平成12年度に具体的に予算化
こうした森林の利用実態を踏まえ利用形態を細かに分析し、同部会では今後の推進すべき森林利用の在り方を詰めていく。その上で例えば1利用者ニーズに応えるための森林整備はどうあるべきか2利用するためには、森林にどのような施設を備えたらよいか3森林についての十分な情報が得られるソフトプログラムの在り方4「森林インストラクター」など現場指導者の育成・活用策を探る−−などの具体策について検討を加えていく。
林野庁では、この最終報告をもとにした必要な施策を実現していくための予算について平成12年度の概算要求に盛り込んでいく考えを示している。
農業施設通じて体験学習を 農水省
一方、農水省でも農村の教育機能を生かし、小・中学生の体験学習を推進するための基盤整備策の検討に着手する考えを明らかにした。
環境保全や国土保全の役割を担っている農村地域を教育活動の拠点として位置づけ、勤労体験学習や環境教育などに幅広く活用してもらうことで子どもたちに農業や農村への理解を深めてもらい、都市と農村との交流を促進させると同時に地域の活性化にもつなげていくことが狙い。今月中にも学識経験者らで構成する委員会を設置、来年3月までに報告をまとめたい考えだ。
まずは全国から数か所のモデル地区を選定。同地域の小・中学生にすでにある体験農園や農業水利施設などを利用してもらい、実際に田植えや稲刈りなどの農作業を行ったり、休耕田に水を引く作業を通じて水田の保水機能など自然が持つ力を理解してもらう。また周辺に棲息する生き物や植物に接することで、自然の大切さを肌で感じとってもらう。
これらをベースに体験学習に必要な施設の在り方や実際に指導するインストラクターの育成なども検討していく。
(教育家庭新聞98年10月24日)