改善遅れる学校給食施設の衛生管理
食材の温度管理がいまだに不適切な例も−−2年前に発生して大きな社会問題となったO157による集団食中毒以来、食材の温度管理をはじめ学校給食における衛生管理の徹底が叫ばれてきたが、厚生省がさきごろまとめた一斉点検結果によると、学校給食施設の衛生管理が思うように改善されていない実態が明らかになった。同省では早急な改善の必要性を強調、来年度以降も引き続き点検と指導を行っていく方針を固めている。
『課題残る温度管理』
今回の一斉点検は、一昨年の春から夏にかけて全国で発生した病原性大腸菌O157の集団食中毒を契機に実施されているもので、今年で3回目。4月から5月にかけて保健所職員による聞き取り調査などを通じて、全国の学校給食施設1万7854か所のうち、昨年の点検で改善勧告を受けた1万4902施設(センター方式の共同調理場2644施設、単独校調理場1万2258施設)を対象として、全54項目について行われた。
改善状況が最も悪かったのは、食材の運搬過程で適切な温度管理ができる保冷車などの整備。一昨年の夏に大阪・堺市で発生したO157による大規模食中毒では、食材を常温のまま搬送して気温が高い外に保管していたことが菌の増殖につながったと指摘されていたが、今回の調査でもセンター方式施設の実に半数近くにあたる46・4%が未改善のままだった。
一方、前回の一斉点検でセンター方式53・0%、単独校方式37・6%と改善勧告数が多かった、調理した食品の適切な温度管理と記録−−についてはそれぞれ18・0%、11・7%と大幅に改善が進んでいることがわかった。
『調理員の意識改善も』
今回改善状況が悪い主な項目は1加熱する食材と生で食べる食材やその使用器具を別のシンクで洗浄する(センター方式19・3%、単独方式26・0%=以下同様)2高温多湿を避けるための十分な換気を実施する(13・2%、13・0%)3調理器具や容器などを衛生的に保管する(12・6%、12・8%)などとなっている。
また、施設や設備以外にも調理に従事する職員の衛生意識面での問題も明らかになっている。野菜などの泥を洗い流す下処理場から調理場に移動する際には調理作業用の衣服、帽子、履物を交換することが求められているが、未改善率がセンター方式で9・9%、単独校方式で12・3%という数字。調理用の履物などを着用したままトイレに入るケースも単独校方式の23・2%で未改善だった。
この他に食材の取り扱いについても問題があった。納入業者が定期的に実施する検査結果の提出が、最近1か月以内にあったかどうかについては、センター方式で14・8%、単独校方式で18・8%が未改善で、この検査結果の1年間保存が求められているが、同様にセンター方式の13・2%、単独校方式の15・9%で改善されていないことも判明した。
これら改善計画の実行状況について厚生省では、全体的には順調に改善されてきているものの、特に施設や設備の改善などある程度の予算がともなう項目で計画が遅れて改善率が低いと分析。また施設改善を必要としない項目も依然として多いことから、まずは意識の改革をはかりながら早急に着手するよう求め、今後も引き続き点検・指導を行っていきたいとしている。
(教育家庭新聞社98年10月17日)