教育家庭新聞・健康号

子どもの心とからだの健康

様々な人が関わる食育活動を
新宿区の食育ボランティア活動

 食育基本法が成立して6年、教育現場でも様々な試みがなされ、成果は着々と積み上げられているようだ。また、教育に関わる多くの人たちが、他組織との連携に関心を寄せ、その必要性を強く感じているという声も高まっている。学校では、学校、保護者、地域との連携によって教育環境の質を上げる気運が育っている。食育活動の盛んな新宿区では、食育ボランティアを募ることによって、様々な分野の人の関わりを促し、地域でより多くの連携を広げている。その計画と成果を伺った。(レポート/中 由里)

画像

新宿区健康部健康推進課健康事業係
健康事業係長 瑞穂 滋さん(中央)
栄養士 主任主事 香取里奈さん(左)
栄養士 主査 嶋田弘美さん(右)

推進計画4年目 目標の80名へ

 ‐食育ボランティア導入計画のあらましを教えてください

嶋田 新宿区では、平成19年度に「食育推進計画」を策定しました。それまでは健康に関する活動としては、情報提供や健康教室等が主流でしたが、区民がより健康的な生活を送るためには、区民が主体となって健康運動を推進することが大切という考えのもとに成り立っています。

  食育ボランティアはこの計画の一環として企画し、募集しました。学校や児童館での食育講座や料理講習会、食育のイベントで、実際に調理に携わったり、レクチャーしていただくボランティアです。4年計画で行っていて、今年度がちょうど4年目です。年間20名、4年で80名の参加を目標としていますが、数字は達成できそうです。

‐どのような形で募集するのですか

嶋田 最初は手探りだったので、保健センターの栄養士に声をかけたりもしましたが、だいたい区報やHPで呼びかけています。まずはこちらで年数回の食育ボランティア養成講座を設け、この講座への参加を呼びかけます。内容は、「新宿区食育推進計画と食育ボランティアの役割」の他に、「食事バランスガイドの紹介」「知っておきたい食品の表示」「料理レシピの作り方」などで、栄養学だけでなく、野菜作りや人との接し方などの講座もあります。この講座に参加してくれた人にボランティア登録を薦めます。これまでの講座では参加された方のほとんどが登録してくれました。

多彩な人材で得意分野生かす

‐どのような立場の人がどのくらい登録するのですか

瑞穂 対象は、栄養士・調理師等の資格を持っている方のほか、食育ボランティアに関心のある方、としています。できるだけ門戸を開いて、さまざまな方に参加していただきたいのです。人材が多彩なほうが面白いアイディアが出て発展性がありますし、皆さんの得意分野も生かせると思います。区民ではない方の参加も歓迎しています。

画像

食育フェスタで実施している
「まめカフェ」 のチラシから抜粋(上)
ランチメニューはメニューコンテストで
入賞した作品(下)
を食育ボランティアの 人達が調理する

‐どのような方が活躍しているのですか

香取 やはり栄養士・管理栄養士や飲食関係の方が多いのですが、年齢層が非常に広いですね。現役を退かれた方から、小さい子どもを連れた若いお母さんまで。高齢の方は長年積み上げた経験を活かせてやりがいがあると仰いますし、普段あまり接することのない子ども達と触れ合えることが嬉しいとも仰います。

  お母さん達は栄養士や管理栄養士として働いていましたが、出産・子育てなどで仕事を辞めた方が多いです。やはり、キャリアを育児中であっても埋もれさせずに活かせることにやりがいを感じているようです。

食育フェスタで活動の活性化

‐具体的にどのような講座やイベントがありますか

 嶋田 学校や児童館の食育では、地域の保健センターの栄養士達とも連携を取り、様々な試みを模索しています。今までの食育講座の内容からご紹介しますと、「エプロンシアター『早寝早起き朝ごはん』」(児童館)「食材の話とたいやきづくり」「離乳食の話と調理実演試食」「食材クイズと赤飯おにぎりづくり」「あずきの話とあずきを使ったおもちゃ作り」「芋から作るこんにゃく作り」などです。

  食育のイベントで最も大きいのが秋に行われる「食育フェスタ」です。開催に先立ち、小中学生とその家族を対象にテーマを決めてオリジナルメニューコンクールを行うのですが、フェスタでは、小さなカフェを開いてその入賞作品を調理し、来場者に提供しています。調理を担当するのがボランティアで、昨年は150食を作りました。ボランティアにとっては一番大きなイベントですね。150食の調理といっても、給食施設や飲食店で毎日数百食作っていました、というような方がいらっしゃるので、非常に助かっています。

  ボランティアの参加により、実現可能な企画が増えました。立場の違う人たちの横のつながりがより広がり、食育活動の活性化が期待されます。

【2011年6月20日号】


新聞購読のご案内