分野別「生活価値観」調査結果
女性は家を守るべきか?
まず家族に関する考え方では、「女性は結婚したら家庭を守ることに専念するのがよい」という性別役割分業の考え方の項目を見ると、「まったくそう思う」「そう思う」といった支持する回答は二九・三%と三割弱で、八五年の四四・二%、九一年の三〇・七%と調査ごとにはっきりと減少傾向にある。これの支持率を性・年齢別に見ると、女性で三十代が一〇・七%、二十代が一二・七%と約一割にまで減少。八五年の調査と比較しても男女ともほぼすべての年齢層で減少し、特にここ十年間で女性を中心に「夫は仕事、妻は家庭」という、従来型の性別役割分業を前提とした家族像を支持しないという傾向が顕著になってきている。
「自分を犠牲にしてでも家族のためならつくしたい」という考え方への支持率については、八五年の五一・〇%から九一年の五三・七%に増加したのち、今回の調査では四九・〇%に減少している。性・年齢別に支持率の変化をみると、女性の五十代が四八・九%と八五年の六六・二%から一七・三ポイント減少しているのをはじめとして、三十代から五十代まで平均して一五ポイント前後減少しており、家族のためにつくすという自己犠牲の意識が特に女性を中心に弱まってきているのがわかる。
家族の死後の生活を考える意識が高まる
「家族の者が死亡した場合の生活のことも、きちんと考えておきたい」という考え方への支持率は七三・五%で、八五年(六二・八%)、九一年(六九・五%)と着実に増えているのが特徴的だ。この「家族のためにつくす」という意識が弱まっている一方で、家族の死後の生活を考える意識が高まっている傾向について、同センターでは「従来型の家族を中心とした考え方が弱まり、かわりに家族の中でも一人ひとりが自分を大切にする『自立型家族関係』を構築しようという意識が芽生えてきたのではないか」と分析し、全体傾向として「家族のための自分」から「自分のための家族」へと考え方が変化してきていると結論づけている。
「人を助ける」意識は年々減少
次に人間関係に関する考え方では、「困っている人が近くにいたら放っておけない」という考え方の支持率は五八・三%で、八五年(六三・五%)、九一年(五八・三%)と徐々に減少傾向にある。性・年齢別の支持率の変化をみると、男性では五十代〜六十代、女性では四十代〜六十代で支持率が大きく減少している。この「人に対する思いやり意識」は、従来から日本人に広く支持されてきた考え方だが、特に中高年層で弱まり、若年層との格差がなくなりつつあるのが特徴となっている。
「つかず離れずの人間関係」
「自分の考えを主張するより、他の人との和を尊重したい」という考え方への支持率についても、八五年(五八・三%)、九一年(五五・四%)、今回(四九・八%)と徐々に減少している。特に特徴的なのは十代の女性で、二五・〇%と九一年の前回調査時の五三・七%から、実に二八・七ポイントも減少している。
「多くの人から孤立してでも自分の正しいと思う考えを主張したい」という考え方への支持率については、八五年が三二・〇%、九一年が三三・五%、今回で二五・四%となっており、前回調査から八・一ポイント減少している。特に六十代の男性では前回の四一・八%から二五・二%と一六・六ポイント減と最も減少幅が大きくなっている。
半面、「多くの人から理解されなくても、気の合った仲間さえわかってくれればよい」という考え方への支持率は、八五年(四四・六%)、九一年(四七・一%)、今回(五一・〇%)と増加。中でも男性の十代が六二・五%と八五年の調査の四三・三%から一九・二ポイント増加するなど、特に若年層での人間関係の形成の仕方が変わりつつあることがうかがえる。
この人間関係に関する結果について、同センターでは「自己主張しつつも集団から離れたくないという、『つかず離れず』の関係を模索しているのではないか」と分析している。
さらに生き方に関する考え方については、「何かをするときは、これまでの慣習にとらわれずに決めたい」という考え方の支持率は四九・三%で、八五年(四〇・二%)、九一年(四五・六%)と増加している。性・年齢別の支持率の変化では、八五年と比較して男性の二十〜三十代と五十〜六十代、女性の二十代以上で増えており、男女ともすべての年齢層で四割以上もの支持を受けている。