インタビュー

第60回日本PTA全国研究大会開催記念インタビュー

 東日本大震災から1年半近く経過した。震災時、学校は避難所として地域コミュニティの中で大きな役割を持つことが再認識され、また、家族はその在り方を改めて見つめなおした1年半となっただろう。今、学校、家庭、地域が子どもたちをどのように愛情を注いで育んでいくことが必要なのか。今年6月より一般社団法人日本PTA全国協議会(以下、日P)の新会長に就任した武田岳彦会長に、間もなく京都府で開催される「第60回日本PTA全国研究大会」に向けて、その思いを聞いた。

H25度移行目標 公益社団法人に

日本PTA全国協議会

社)日本PTA全国協議会
武田岳彦新会長

‐新会長として山積する大きな課題に取り組むわけですが、そのお気持ちをお聞かせ下さい。

 日Pは、来年度に一般社団法人から公益社団法人への移行を目指しています。そのための規約の変更など移行のための準備を現在進めているところですが、PTA活動は高い公益性をもった活動ですから、活動の中身が大きく変わることはありません

  法人格の変更により、規約で定められている役員数を減らし、それぞれの責任をより明確にすることになります。そして会計処理をより透明にし、運営方法の効率化を進め、PTA活動をさらに大きな効果をあげるものにしたいと考えています。

震災遺児・孤児を継続し見守る「心のきずな61キャンペーン」

‐東日本大震災から1年半近く経過しますが、日Pが行う「心のきずな61キャンペーン」について教えてください。

  日Pは、震災直後から被災地への支援を行ってきました。全国のPTA会員の皆様から寄せられた義援金は、今年3月12日の時点で2億6000万円以上になり、2億1000万円を被災地へ配布させていただきました。

  しかし、復興への道のりはまだまだ厳しく、復興したと言うには程遠い状況です。被災地における子どもたちの環境も、健全な状況に戻すにはさらなる支援が必要です。そこで、日Pは継続支援の方向性を検討し、「心のきずな61キャンペーン」という名称で支援活動を行うことにしました。

  これは、震災で保護者を亡くした子どもたちへ、公益信託基金「東日本大震災日本PTA教育援助基金」を設立し、就学助成を行うものです。震災から1年半近く経ち、被災地への社会の関心は少しずつ薄くなってきていると感じています。私たちは「忘れていない」ということ。特に、大切な心のよりどころを失った子どもたちに、「全国のPTAが皆さんを見守っています」というメッセージを伝えたいという思いを込めています。

  具体的には、設立した基金によって東日本大震災で孤児・遺児となった子どもたちに、月額1万円の就学支援(15歳に達する学年の終了月まで)を行います。

  また、基金が積み上がれば、各PTAによる支援復興活動へも助成していくことが可能になると考えています。

子どもが育つ場 協力して作ろう

‐被災地への支援以外で日Pが行う子どもたちへの事業という点では、国際交流事業も盛んですが。

  日Pは毎年、国際交流事業「少年少女の翼」を実施しており、今年度で第27回目となります。社会がグローバル化していく中で、将来世界で活躍する子どもたちを育てることの必要性は誰もが認めるところです。

  長く事業を継続することで受け入れ先の体制もしっかり整ってきましたし、現地での交流活動の内容も充実してきています。交流の質も上がり、活動の幅が広がってきたことで、非常に充実した内容になっていると自負しています。そして今後もこの活動をしっかりと継続していきたいと思います。

大会の発表を 各活動で活かす

‐各PTAが日常的に様々な活動をしていますが、その意義はどのようなところにあるのでしょうか。

  PTA活動は、すべての子どもに分け隔てなく与えられるものです。長年積み重ねてきた各PTAでの活動が、子どもをよい方向に導きよい環境を作ってきたという自負を会員は持っています。

  子どもたちが育つ場は学校、家庭、地域社会など多岐にわたり、それぞれの役割は明確に分けられるものではなく、全てが協力していかなくてはなりません。学校で教えることを家庭でも教えれば相乗効果があります。子どもに関わる大人たちが、お互いにフォローし合って子どもに接するべきです。PTAには、保護者だけではなく、先生も含まれています。両者が地域社会とも連携をとりながら、子どもを守って行く必要があると思います。

‐京都大会はどのような大会を目指していらっしゃいますか。

  京都大会は、メインテーマを「子どもの"いのち"を育むPTA活動」「親〈P〉と先生〈T〉が手をつなぎ〈A〉地域社会全体で〈C〉子どもを抱きしめる〈H〉PTA活動」「親子の会話で"こころ"が触れ合う家庭をつくるPTA活動」「自立と自律のできる子どもを育むPTA活動」「楽しく、ためになり、元気の出るPTA活動」の5つを掲げています。これらのテーマのもと、分科会ではPTAの様々な活動の参考となる事例発表や討論が行われます。

  参加された会員の皆さんは、大会で発表された様々な取り組みの事例を持ち帰り、それぞれのPTA活動の中で活かしてほしいと思います。また、役立つアイデアを皆さんに与えられるような大会にしたいと思います。

  そして、東日本大震災による被災地の子どもたちへの継続支援活動である「心のきずな61キャンペーン」の取り組みを全国の会員の皆様に、呼びかけていきたいと考えています。

【新会長プロフィール】

■武田岳彦(たけだ・たけひこ)
大学3年生、高校2年生、 中学3年生の父親。 平成24年6月より(社)日本PTA全国協議会会長に就任。 山形県PTA連合会会長を兼任。「心のきずな61キャンペーン」の 実施に尽力してきた。

【2012年8月20日号】

 

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