介護業界の若手経営者を中心に構成し、その代表理事を務める一般社団法人「日本介護ベンチャー協会」のキャッチフレーズは“介護に、誇りと憧れを。”
「私たちが大学を出て就職するようになった2000年頃は、IT業界の成長企業や若者の起業が注目されていた時代。同じように介護は、若者からもっと憧れや誇りを感じてもらえる仕事なのです」。
3Kと言われ敬遠されがちな職種の一つ、離職率も高い介護の仕事。リーマンショック以降の国の就労対策が功を奏し、最近の求人状況は改善されているとはいえ、将来を見据え現状を楽観はしていない。若者に介護の仕事への認識を深めてもらうため、同協会を軸にイベントなどを通して情報発信に努めている。
ヘアメイク、ネイル、ファッションなどの業界から介護ボランティア参加を呼びかけ。その体験メンバーを中心に20代女性6人で「CuraGirls」(キュラガールズ、“Cura”はイタリア語で介護の意味)を結成。渋谷で11月15日開催されたエンターテインメントイベント「えんばり」でデビュー。今後も若者を対象に、トークショーなど各種イベントとのコラボ企画を予定している。
「介護への入り口は色々あっていい。そこから何かを感じ考えてくれればと思います」…若手経営者として発想は柔軟だ。「私自身がそうでしたから」と言う本人の介護との出会いは、異業種からの出発だった。大学新卒で入社したのは主に飲食店などの店舗経営を行うマネジメント会社。フランチャイズなどの経営手法を実地で学ぶ。
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次に「たまたま」踏み込んだのが介護サービス業界。そこで新潟事業所の開設準備から関わり、現場に長期間住み込んだ。マネジメントの立場だったが、そこは間近にお年寄りや介護スタッフとも接する介護の現場でもあった。
利用者の一人だったあるお年寄りとの出会いが印象的だったと言う。認知症も少しあってコミュニケーションも難しく、3か月位ずっと入浴もさせてくれない介護拒否だったお爺ちゃん。特別養護老人ホームへの入所が決まった時、初めて泣きながら「ありがとう、幸せだった」と言われた。
「健常者の“ありがとう”とは全く違う、その人の人生まるごと、命がこもった一言だったのです。自分が人のために役立っている、介護は素晴らしい業界だと思えました」。
仕事への誇りと同時に介護業界の明るい将来展望を強調する。
「待遇面は他業種より月額数万円の格差があります。介護保険と本人負担だけの現状の仕組みで、経営努力だけでは解決できないところ。でも将来の成長産業ですから、本人がキャリアステップの努力を積むことで報われる世界。やりがいを感じられる仕事です」。
斉藤正行(さいとう・まさゆき)=1978年生まれ、奈良県出身。2000年立命館大学卒業後、飲食業のコンサルティング・事業再生を手掛ける会社に入社。03年「愛の家」のメディカル・ケア・サービスに入社しグループホーム事業のビジネスモデルを確立。10年5月小規模デイサービス「茶話本舗」(2011年11月1日現在で487事業所)をフランチャイズ展開する日本介護福祉グループ社へ入社。現在は取締役副社長。同年10月一般社団法人日本介護ベンチャー協会設立、同会代表理事を務める。
【2011年11月21日号】