2004年7月から、一般市民も使えるようになったAED(自動体外式除細動器)。心臓が心室細動を起こした際に電気ショックを与え、その機能を回復させるもので、学校や駅などの公共施設などさまざまな場所に設置されている。高校野球選手やマラソンランナーの命を救ったといったニュースを耳にした人も多いだろう。
そうはいってもなかなか使用する機会のないAED。いざ自らが人の命を助ける場面に直面した際に慌てないためにも、わかりやすさが重要となってくる。韓国に本社をもつ椛蜑Fインターナショナルの日本法人大宇ジャパン鰍ヘ、昨年からAEDの販売に力を入れており、2月にAED普及型モデル「アイパッド NF1200」の販売を日本で開始した。
これは、韓国の医療機器メーカーであるシーユーメディカルシステムが開発したもので、すでに日本で発売されている「パラメディック CU―ER1」よりもさらに軽い2・2sとリーズナブルな価格、救命工程が一目でわかる「リファレンスガイド機能」が大きな特徴だ。「一目で使い方がわかるので何処でも簡単に活用いただけるのではと思います」と話すのは、平成14年の日本法人設立前にも5年間日本チーム長として活躍し、10年以上も日本を知る朴省顯代表取締役社長。
「創造」「挑戦」「信頼」が経営理念の同社は、鉄鋼・金属・化学などを扱う総合商社だが、「扱うアイテムのなかで少しでも日本の社会に貢献できる物があればと考え、命を救うAEDの普及に意味があると思い力を入れております」と、販売する一方で、社会貢献活動として、東京の愛育幼稚園や千葉の県立聾学校などへのAED寄贈や、千葉マラソンへの貸し出しも行っている。
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朴社長の社会貢献の意識は、同社の経営理念でもある一方、父親の影響もある。「私の父親は国家公務員として働いており、社会に少しでも貢献するという父の生き方を見て、社会貢献の意識を持ちながら成長しました」と、父親への尊敬の念が深い。
世界で86か国の設置事例をもつ「アイパッド NF1200」。「これからは学校などに正式に設置してもらう一方で、携帯電話やパソコンのインターネット機能を使って、AEDの設置場所や使用状況が簡単にわかる全体のシステムを構築したいと思います」。韓国では日本の新幹線にあたるKTX内で乗客が倒れ、車内に設置していたAEDを使用したという情報が、すぐに管理センターに届き、次に到着する駅に救急車が来ていたという事例もあったという。
「韓国ではAEDへの意識は高いのですが、設置は日本ほど多くありません。アメリカのアトランタ空港では100bごとに設置されているなどの厳しい基準があり、シアトルでは、市民の70%がCPR(心肺蘇生法)の講習を受けています。日本も今後その方向に向かっていくのではと思います。我が社の夢は一家に一台AEDがあり、みんなが安心した社会を作ることです」と、日本社会への貢献を終始語った。
朴省顯(PARK―SEONG―HYUN)=1956年3月11日生まれ、韓国出身。1979年ソウル大学卒業後、大宇本社に入社し、機械チームに所属。同社トリポリ支店、本社開発チームを経て、94年大宇ジャパン鰍フ日本チーム長として5年間日本で活躍し帰国。2004年から現職。06年には法政大学大学院へ進学し、修士課程を修了。現在博士課程に在学中。
【2010年2月20日号】