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経済成長を支える高い学力を維持する
個性や創造性を伸ばす教育システム

アイルランド首相 ブライアン カウワン

経済ミッションで来日

ブライアン カウワン さん

 アイルランドのブライアン・カウワン首相が1月12日から17日まで来日している。今回の訪日は、アイルランド企業70社の首脳を同行した経済ミッションであり、貿易、投資の分野で日本企業との契約の締結が目的であった。

 アイルランドは農業製品をイギリスに輸出する農業国家であったが、1950年代に入るとエレクトロニクス、エンジニアリング、医薬品などの分野に積極的に投資をおこなった。また、外国企業の積極的な誘致政策をとったこともあり、急激な経済成長を遂げることに成功した。
 その経済成長は「ケルトの虎」と賞賛され、近年はエレクトロニクス分野の成長が著しく、コンピュータソフトウエアの輸出額では、アメリカを抜いて世界第1位となっている。

 こうしたアイルランドの経済発展は、勤勉な国民性と、国際的にも高い学力に支えられている。知識集約型への産業構造への転換に成功したことや、それを可能にした背景は、日本と非常に似ている。カウワン首相も会見の中で、アイルランドと日本の類似性として、高い学力をあげた。
 日本ではOECDの調査において順位が下がったことが問題になっているが、同様にアイルランドも順位が下がっている。ただし、得点はあまり変わっていないこともあり、「アイルランドでは特に学力低下はありません」という。

 経済発展を続けるためにも、アイルランド政府は教育の分野に力を入れており、大学までの公立学校の授業料を免除するなど、その教育システムは高い評価を受けている。

 アイルランドでは、教育現場で情報機器が積極的に活用されており、「すべての学校にコンピュータが導入され、低学年の頃から、使い方を学んでおります」。ただ「特にプログラミングソフトを書くといったITスキルを育てるにあたり、とても重要である、個性や創造性を、アイルランドの教育システムでは伸ばすようにしている」という点が、日本との違いではなかろうか。「アイルランドにおいて学力低下がない」というのは、このあたりに理由のひとつがあるのかもしれない。

 近年、日本からの語学留学も増えているアイルランドであるが、「すべての年齢で国際交流に力を入れている」とカウワン首相は話す。また、教育の分野には高い水準の投資を続けているし、これからも続ける必要がある」と、カウワン首相は教育を重視していく決意を明らかにした。

 Brian Cowen,T.D.(ブライアン カウワン)=1960年1月生まれ。ダブリン大学卒業、元事務弁護士。1984年、父バーナード・カウワンの死去による補欠選挙にて初出馬・初当選、下院(ドール)議員となる。1992年2月〜93年1月労働大臣、保健児童大臣・外務大臣・財務大臣等を歴任後、2008年5月首相となり現在に至る。家族は妻・および二女。

【2009年1月17日号】