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「釣りバカ日誌」シリーズを監督

自分なりの思いをシリーズに込め
20年続く変わらぬ名コンビを描く

朝原雄三さん  1988年のシリーズ開始から20年目を迎える「釣りバカ日誌」シリーズ。その最新作「釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束」が、9月8日から全国で公開となる。「釣りバカ日誌14」からシリーズの監督を手がけてきた朝原雄三監督も本作で5本目。最新作ではハマちゃんスーさんの名コンビが繰り広げる笑いの中に、リゾート開発による自然破壊というテーマを取り入れてきた。

  「今回のロケ地は岡山ですが、自分は香川の生まれなので、瀬戸内海の自然の景観が失われてしまうことに危惧を抱いてきました。作中ではリゾート開発に反対する住民たちが座り込み運動を起こしますが、どんなに頑張ったところで現実は変わらないという考えに対して、この作品を通じ、あきらめずに厳しい現実を跳ね返してほしいという思いを込めました」。
  子どもの頃から映画好きで大学時代には自主制作映画を撮ってきた朝原監督だが、本格的に映画監督の道に進もうとは夢にも思っていなかった。それが松竹の助監督募集に採用されたのがきっかけで、山田洋次監督の下、「男はつらいよ」シリーズの助監督として撮影に関わることになった。

  「山田監督を見ていると、いかに真面目に映画に取り組んでいるかが分かり、真剣さに感銘を受けました。その後、『サラリーマン専科』などの作品で監督を務めてきましたが、『釣りバカ日誌』シリーズの監督になるにあたり、何か新しいものを取り入れて自分なりの『釣りバカ日誌』シリーズを作り上げていきたいという思いはありました」。
  2004年に「釣りバカ日誌15」で文部科学大臣新人賞を受賞した朝原監督。自分が受賞したことより、作品を裏で支える美術や照明などスタッフ陣の技術の高さを評価してもらえたことがうれしかったと語る。

  朝原監督が言うにはハマちゃんは何事にも縛られないスーパーマン。そのハマちゃんを演じる西田敏行さんは、すでに自分の中にハマちゃんという役を完全に取り込んでいる。そんな自由人のハマちゃんに対し、スーさんは「釣りバカ日誌」の中でも時事的な部分を背負っており、それを三國連太郎さんも意識して、発言する一字一句を深く考えながら演じているという。
  1作目が公開された88年は正にバブル全盛期。仕事よりも家庭や趣味が大事というハマちゃんの存在は仕事重視社会に対するアンチテーゼでもあった。それが今ではハマちゃんのような生き方が受け入れられる風潮に変わりつつある。

  「この20年間で世の中は大きく変わりましたが、そうした中で同じ役を演じ続けるというのは並大抵のことではありません。これまで『釣りバカ日誌』を見たことがないという人にも、2人の完成されたやり取りを見て、そのすごさを確認してもらいたいですね」。

 朝原雄三(あさはらゆうぞう)=1964年、香川県生まれ。京都大学文学部卒業。87年松竹入社。「男はつらいよ 知床慕情」から山田洋次監督に師事。95年「時の輝き」で監督デビュー。その後、「学校」シリーズや「たそがれ清兵衛」などの作品で助監督をつとめる。03年「釣りバカ日誌14」で監督をつとめ、04年「釣りバカ日誌15」で2004年度文部科学大臣賞新人賞を受賞。


【2007年8月18日号】