■研修により講師の育成に力を注ぐ
学校と連携し塾の指導法を伝える
今年1月、東証二部に上場した早稲田アカデミーは、校舎数107校、生徒数は小中高合わせて約3万人を数え、早慶附属中高の合格実績bPを誇る業界トップの進学塾。
そんな早稲田アカデミーも、早稲田大学在学中に3人の小学生の家庭教師であった須野田社長が、それぞれの家を回るのは大変ということから、昭和50年に友人とはじめた学習サークルが出発点である。当時は子どもの数が増える一方で、それに比例して生徒数も急激に伸びていった。しかし、全ての進学塾が早稲田アカデミーのように成長したわけではない。やはり高い合格率という結果を残せたことが、信頼を勝ち取ることにつながった。
「講師の育成こそが合格率UPにとって欠かせない要素でした」と須野田社長が語るように、新卒で入ってきた講師を育て上げるためのシステムづくりに早稲田アカデミーは力を注いできた。長野の軽井沢アカデミーヒルズでは、そこに泊まりこんで教育のプロになるための研修が徹底して行われる。「ここでの研修は座学に留まらず、実際に生徒に対して授業を行ってもらいます。その授業風景をビデオに収めるのですが、自分の授業を第三者的な視点から見ることで、教え方のどこに問題があるかが分かるのです」
そして、昨年度から土曜特別講座ということで、港区や足立区の中学校に講師の派遣を開始したが、こうした生徒が塾の講師から教わる講座に加えて、現役の学校の教師が塾の講師から授業の進め方を学ぶ講座も設けている。「学校の先生が塾の講師から教え方を学ぶ必要はないと思う人もいるかもしれませんが、学校の先生は授業以外にも部活動やPTAなど、幅広い対応が求められます。それに対して、塾の講師は勉強を教えることに特化して指導力を身に付けてきたので、こうした連携は、とても意義のあることだと思います」
早稲田アカデミーの授業では私語を交わす生徒は全く見受けられない。授業を視察にきた学校の先生は、まずそのことに驚かされるという。このように講師が怒鳴らなくても静かに授業が行われるのは、一人でも私語を交わしたり、テキストを開いていない生徒がいたら、次のステップに進まないからだ。「これは簡単なことのように思えますが、教える側にも緊張感が強いられます。張り詰めた緊張感の中で授業を行うことは、1回ならできても毎回持続させることは大変です。しかし、この緊張感をコントロールできれば、授業中の私語は無くなります」
勉強をすることで、生きる力や人間性まで身に付くというのが須野田社長の考え。仕方なく勉強するよりも、勉強すること自体が人生において意味があると考えれば、学習の効果がグンと飛躍するという言葉に思わずうなずかされる。
【2007年3月10日号】