「性教育の指導資料」配布

具体的事例が盛りだくさん

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 性は人格の基本−−文部省は、「人間の性は人格の基本的な部分」という観点に立って、1性教育の基本的な考え方2目標3指導内容について詳しく解説した・性教育指導資料・「学校における性教育の考え方、進め方」(A4判・105ページ)を作成。全国の小・中学校、高等学校などに約12万部配布した。同省ではこれまで「純潔教育」「性に関する指導」という表現を用いていたが、「性教育」としたのは初めてのこと。性の逸脱行為や妊娠、わいせつ行為、売春などに関する具体的な指導事例も盛り込んでいる。

 同指導資料は小・中・高校の教諭や養護教諭、大学教授といった教育関係者以外に、医師、家裁調査官、児童相談所長、警察庁少年補導研究室長など関連分野の専門家を含めて21人の協力でまとめられたもの。
@「学校における性教育の基本的な考え方」A発達段階等に応じた性教育の目標及び指導内容B性教育の具体的な指導方法C性教育における家庭・地域との連携D性の逸脱行動に関する指導E性に関する指導の具体的事例とその考察−−の6章で構成されている。

 第1章では、性教育の基本的な考え方について「児童・生徒及び幼児はそれぞれの成長過程で、性に関する多くの課題に直面し、それに対応するため意志決定や行動選択を求められる。そのため学校は教科を中心に全教育活動を通じて、性教育を行っている」としながらも「しかし、最近の児童生徒等の性的成熟や性意識・性行動などの実態を考えると、これらの背景にある家庭や社会の現状を踏まえ、学校は様々な学問分野を基盤として幅広い観点から、性教育を一層充実させる必要がある」と、時流を考慮した対応の必要性を強調している。
 さらにこれを踏まえたうえで、学校における性教育の目標については「児童生徒等の人格の完成と豊かな人間形成を究極の目的とし、人間の性を人格の基本的な部分として生理的側面、心理的側面、社会的側面などから総合的にとらえ、科学的知識を与えるとともに、児童生徒等が生命尊重、人間尊重、男女平等の精神に基づく正しい異性観をもつことによって、自ら考え、判断し、意志決定の能力を身に付け、望ましい行動を取れるようにすること」と定義している。
 こうした観点からの性教育に必要な内容として@自己の性を確かなものにするA男女の人間関係の育成B家族や社会の一員として必要な性−−を挙げている。また学校における性教育の進め方については、全体構想として「多様化している男女の生き方に対応する指導」「人間尊重の精神の徹底を図る指導」「男女の人間関係の構築や改善を図る指導」「社会の性情報や性的環境に対応した指導」「性の逸脱行動に対応した指導」「感染症の新たな課題に対応した指導」の6つのポイントを指摘。教職員の共通理解のもとに指導計画を立案することが大切としている。
 第2章では幼稚園、小学校、中学校、高等学校、障害がある児童生徒前に目標と指導内容に関して詳述している。
  
 例えば幼稚園では、他者の存在を意識し、自己を抑制しようとする気持ちが生まれる時期と規定。男女の生殖器の違いから自分が男の子か女の子かの認識を確かにさせたり、動物や赤ちゃんは父親・母親がいて生まれてくることに気づかせると同時に、自分の誕生の喜びを感じさせたりする。
 小学校においては低学年、中学年、高学年ごとに目標を設定するが、基本的には1生命の誕生や心身の発育・発達における男女差や個人差に関する基礎的事項を理解させ、自己の性を受容し、自分を大切にしようとする心情や態度を育てる2男女には体の特徴や発達段階などに違いがあるが、お互いに相手の人格を尊重しあうことが大切であることを知り、相手を思いやる心情や態度を育てる3家庭における役割は男女の別なく分担し、お互いに助け合うことが大切であることを知り、家庭や社会の一員として適切な判断や意志決定ができる能力や態度を育てる−−ことに重点を置く。
 中学校と高等学校では人間の性の成熟について科学的に理解させ、自己の性を受容し、自他を大切にしようとする心情や態度を育てることに配慮していく。また社会における性的な事象を見つめ、家庭や社会の一員として適切な判断や意志決定、行動選択ができる能力や態度の育成にも力を入れる。
 障害を持つ児童や生徒に対する性教育は、基本的には障害のない者と同じ扱いとなるが、その障害の状態や程度に応じて設定する必要があるとしている。
 第3章では集団指導の方法と内容、留意点について述べると同時に課題学習やディベート、ロールプレイングなどの指導方法について詳述。また個別指導の重要性も指摘する。
 第4章では、日常から家庭や関係基幹、地域住民と適切な連携・協力を行うことが大切と強調。そのうえで、学校行事や授業参観、懇談会などを通じて協力しあうことの必要性を強調する。
 また第5章と第6章については、風俗産業の現状と児童生徒等のかかわりやその実態を明らかにしたうえで、「妊娠」「わいせつ行為」「強姦」「売春(いわゆる援助交際)」「中学生の下着盗」「性風俗への関与と覚せい剤の使用」−−といった事例を挙げて、具体的な対応策について紹介している。
(教育家庭新聞99年8月19日号)