食中毒防止に向けて衛生管理の徹底も
システムを過信せずに調理従事者の意識改善を
「O157などの食中毒防止に向けて衛生管理の徹底を」−−食中毒が多発する時期が到来したが、文部省の「学校給食における衛生管理の改善に関する調査研究協力者会議」(阿部裕吉座長=学校食事研究会事務局長)では、さきごろ食中毒防止のための調理場などでの衛生管理改善のポイントなどを示した「学校給食における衛生管理の改善に関する調査研究報告」をまとめた。過去に食中毒が発生した調理場など14か所に専門家を派遣して指導・助言などを行う「衛生管理推進指導者派遣・巡回指導事業」で明らかになった問題点ごとに改善の方向を示すもので、文部省では同報告書を都道府県教委などを通じて、全国の給食実施校や給食センターに配布し、研修会に活用してもらうなど学校給食現場での衛生管理の徹底を求めて行く方針だ。
報告書ではまず文部省が整備を進めているドライシステムの運用の問題点を指摘している。同システムは床面をいつも乾燥した状態で使用するもので、室内の湿度を低く保ち細菌の繁殖を抑え、床面からの水はねによる汚染や食材からの二次汚染を防止する効果を持つ。
しかし、せっかく整備しても今まで同様に床面に水を垂らしながら野菜を運ぶなどシステムへの過信が見られるとしている。そのため関係者に対してドライシステムの運用に関する研修を改めて受けさせるなど、同システムへの理解が必要だと指摘している。
一方でドライシステムでない調理場でも、水がこぼれにくい調理台を導入したり、慣習化している調理開始時の水まきや調理台に熱湯をかける作業を廃止するなど、実質的なドライシステムとして活用している事例を紹介。こうした事例を参考にして意識的に衛生管理の改善をはかっていくことの必要性を強く訴えている。
さらに施設設備の面での問題点としてレバー式の給水栓を取り上げている。
これは手を汚さないためにひじでレバーを操作するものだが、この給水栓取り付け位置が不適切なため、ひじを使った操作ができずに、日常的に手指しで操作している事例をあげて、施設設備の設置者は調理場の実態にあわせた衛生管理が行われるよう学校給食従事者の意見を十分に取り入れる必要があると強調している。
また細かい例としては調理場近くにごみ集積場があり、調理作業中に収集にきている例を示し、ごみ集積場の位置の再検討や調理作業時間とごみ収集時間の調整なども求めている。
一方調理従事者の健康管理と資質向上についても報告している。事例として手指に傷がある調理員がそのままの状態で調理に従事していたり、高い確率で調理員の鼻孔から黄色ぶどう球菌が検出されたこともあって、マスクや厚手のゴム手袋装着の徹底も求めている。
また報告書では調理場建設時の立地条件、食材納入部の位置、効果的な吸気・排気の方法などハード面の細部にわたって指摘。さらに食中毒の原因菌ごとに防止の留意点なども具体的に示すなど、食中毒防止の徹底を強く求めている。
教育家庭新聞(99年6月12日号)
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