選択保健を一年間担当
【神奈川・横浜市立本郷中学校】
市内で80名もの養護教諭が兼職発令を受けて授業を行っている横浜市は、以前より養護教諭による保健指導やティームティーチングを積極的に実施している。
鎌倉市との境に位置する市立本郷中学校は、総合的な学習の時間の中で、自己表現を通して人間関係作りを行う「ピアサポート」の授業をいち早く導入し、全国にその実践が取り上げられるなど、総合的な学習に関して先進的な学校である。生徒数が634人。普通学級17クラスのほかに、特殊学級が4クラスあり、昨年まで2人の養護教諭が配置されていた。
〈複数配置で対応〉
養護教諭の野村y子先生は昨年度から兼職発令を受け、1年生保健と3年生選択保健の授業を行っている。複数配置により授業に出ても特別に支障はなく、条件的にとても恵まれていたとのこと。また、校長以下、他の教諭も養護教諭が授業を行うことに協力的な姿勢であったことも、やりやすい環境であったという。「中学校は思春期のため、小学校に比べると生徒の来室も多く、保健室を空けることは難しい状況です。本校の場合は、私が授業に出ても、もう1人の先生が保健室にいてくれたので、兼職発令を受ける条件が揃っていたと言えます」と野村先生。単にケガや具合が悪いからと来室するだけでなく、心を癒しに来る生徒も多いとのこと。取材した日も、休み時間ごとに何人もの生徒たちが保健室を訪れていた。同校の保健室は広々とした居心地の良い空間で、棚には性教育に関する本がたくさん並んでいる。「保健室が健康学習室となってもらえればいいと思っています」と野村先生は話す。
〈授業実践〉
昨年度、野村先生は2つの授業に取り組んだ。1つは、3年生選択保健の授業を1年間担当。11人の生徒が野村先生の授業を受けた。フリートーキングやブレーンストーミングの授業を中心に、生徒たちに自分たちの健康課題を見つけさせ、個人、またはグループで調べ学習を実施。遺伝子組み替え食品や環境ホルモン、性の問題など多くの課題が上げられ、ところどころで、基礎的な知識を教える授業を行った。生徒たちは、自分で見つけた課題であるために、実に積極的に取り組んだとのこと。年間を通して授業を行えたことで、先生自身もその成果を実感したという。2つめは、1年生の単元「心身の機能の発達と心の健康」の授業を2時間ずつ6クラスで実施。第二次性徴の分野を担当し、自分の心身を見つめさせ、自分を主人公にして授業を行った。特に心の部分では、交流分析のエゴグラムを使って、自分の心に気づく内容を取り入れ、自己成長を図った。
「保健室では日々の生活を通して生徒の成長の課題や、友人関係、性についての悩みなど生徒自身が抱える健康問題が見えてきます。養護教諭が授業を行うメリットは、保健室で見えてきた生徒たちの生きた健康課題を生徒たちに気づかせることができるということだと思います」と野村先生は強く語った。
今年度は養護教諭は野村先生が1人となったため、選択保健の授業は行っていない。生徒達からの要望も多くあったとのことだが、やはり時間的に厳しいことが現状であり、今年は1年生6クラスの授業を2時間ずつ担当する予定。野村先生が授業している間は、教科担任の先生が保健室に在室するか、または保健室の近くの教室で授業を行うなど、現在検討中であるという。また、横浜市独自の保健室登校子ども支援事業という制度を受け、養護教諭経験者が週に2日程度来校するので、その時間を利用して教材の研究や準備をするということもできるので、大変助かっているという。
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