学校給食における学校・家庭・地域の連携推進事業

総合的学習のきっかけに
長野・阿智村 標語集で家庭の意識高め

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 日本体育・学校健康センター主催「学校給食における学校・家庭。地域の連携事業」の平成11年度連絡協議会が先月17日に都内で行なわれ、昨年度から2年間にわたって同事業を委託された全国7地域の関係者が集まり、実践報告が行なわれた。
各地域とも親子料理講習会やふれあい給食会などの実践や、それぞれの地域の特性を生かした独自の取り組みを報告した。福島県只見町では、魚とり名人や笹巻作りの名人など人材マップを作成し、地域の人材をフルに活用。東京都府中市では、月1度、保護者立ち会いのもとで食材料の開札を行ない、一品づつ食材料を吟味して選んだことなどを報告した。

↓地域の人に五平餅の作り方をおしえてもらっている。
 指導助言を行なった文部省の金田雅代学校給食調査官は、自然に囲まれた地域の子どもたちでさえ農業体験が少なく、食生活に多くの問題点をかかえていることを指摘。「この2年間の取り組みを総合的な学習の時間を使って整理しながら継続し、さらに深めていって欲しい」と述べた。来年度の同事業への委託申し込みは全国20数件の自治体から挙がっているとのこと。


 同事業の委託地域のひとつ長野県下伊那郡阿智村でも、さまざまな取り組みが行なわれた。
家庭への啓蒙という点で、学級レクの時間を使った親子調理実習、PTA主催の料理教室をそれぞれ年2回づつ実施した。また全家庭を対象に食生活に関する標語集を募集し、食生活標語集とポスターを作成。子どもと親それぞれに1句づつ書いてもらい、親子の標語を並べて編集した。学校栄養職員の林静子さんは「食に対する家庭の意識をまず知りたかったのが一番の目的です。さらに・句作ることで家庭で食を振り返るきっかけにもなったと思います」と話す。特に強制はしなかったが、小学校ではすべての家庭から標語が集まったという。さらに地域の人々に呼びかけて料理集「すくすくクッキングを作成。「我が子に伝えたい料理」と募集をかけ70人からの応募を一冊にまとめ、全家庭に配布した。いくつかは給食に取り入れたり、調理実習に紹介した。料理のレシピだけでなく、その料理に対するそれぞれの思いも綴られている。 

 給食でも同事業をきっかけに新たな取り組みが行なわれた。阿智第三小学校では、子どもたちが養殖したニジマスを塩焼きにして給食に取り入れ、第二小学校では老人クラブの指導を受けて子どもたちが育てた大豆を地元の施設で豆腐にし、給食に出すなどした。さらに、よもぎ、ニラ、花豆などの地場産物を全校で積極的に給食に取り入ていったことで、残菜が目にみえて減ったという。同事業の委託を受けるまで全く地場産物を給食に取り入れることはしていなかったとのこと。「地場の産物だけでなく、食材の産地を知らせることで子どもたちは興味をもち、残菜が減ります。そのこともこの事業を通して改めて実感したことの一つです」と林さん。
同地域には、小学校3校、中学校が1校あり、1つの共同調理場で給食を提供している。この事業をきっかけに調理場と学校との連携も密になった。養殖しているニジマスを給食で取り入れたのも、学校側からの情報提供と協力があって実施に至ったこと。「各校が総合的な学習の時間に対し模索している中で、その時間にうまく便乗し食をテーマに取り組んでいきたい」と林さんは話す。
 今後は学校給食でできることは継続して行っていき、さらに地域全体で子どもの健康を考えるという意味で、地域の組織づくりから始めていきたいとのこと。
(教育家庭新聞2000年3月11日号)