学校食事研究会事務局長として長年学校給食の現場を見てきた阿部裕吉さんは、文部省の衛生管理推進指導者派遣・巡回指導事業にも指導者として参加している。現場の実態について話を聞いた。(以下談)
昨年度最もショックだったことは、ドライシステムの調理場で食中毒がおこったことです。「ドライだから安心」という意識があったようで、本来乾いた状態で使うべきところをウエットにして使用している状況がみられました。最新のシステムだからと安心せず、今後、十分なドライシステムについての研修が必要です。
衛生管理に関してですが、これまでに文部省から出された報告書に書いてあることを全調理場が守っていれば何も問題はないと思います。加熱や手洗いの徹底など、一時から比べると基本的なことはずいぶん行われるようになってきましたが、ホースを使って思いっきり水を撒いたり、配缶の隣で洗浄が行われていたりという現状がまだまだあるようです。
食品衛生管理とは、常識的なわかりきったことを行うことですが、それが調理の場では、時間的追い込みなどによって無意識に破られてしまいがちです。いかに、基本の行動をパターン化できるかというところが重要になってくるでしょう。その際、調理員全員がその行動を理解することが大切です。
学校の問題点をあげてみると、食中毒を起こした学校の校長に話を聞くと、まるで被害者のような感覚で、責任の意識が全くないのです。食中毒を起こしてもなにをしていいのかわからなかったり、その対応策も考えていない場合が多いようです。もっと学校給食の調理の現場に関心をもち、衛生管理の状況など把握するべきでしょう。
地震や火災といった災害に対する危機管理は以前から徹底されていますが、食中毒に対してはその危機管理が全くといっていいほどありません。学校給食が原因で食中毒にかかっても学校では気づかず、病院に行って初めてわかるというケースが多いのです。食中毒というのは早期発見が重要であるということを学校関係者はもっと認識するべきですね。早期発見によって子どもたちの助かる率も高まりますし、異変を感じたらすぐに学校が気づき、届けを出せる体制になっていることが重要でしょう。
(99年5月15日号)
|