凶悪犯罪大幅増加

死に至らしめる犯罪6割増

 少年非行が戦後第4のピークに向けてますます増加中−−警察庁がさきごろ公表した「少年非行等の概要(平成10年1〜12月)」によると、少年非行の年間補導件数は少年人口が減少しているにもかかわらず、2年連続で15万人台を記録していることがわかった。内容的には凶悪犯罪や粗暴犯少年が高水準で推移する中で、殺人など人を死に至らしめる犯罪が大幅に増加。対教師暴力事件も増え、少年の薬物汚染も相変わらず深刻な状況で警察庁では「極めて憂慮される事態」とし、対策に全力をあげる方針だ。

 まず交通事故や交通違反を除いて平成10年に補導された刑法犯少年(14歳以上20歳未満)の数は15万7385人。14歳から19歳までの少年人口が前年より20万人(2・1%)減少した中で、前年比3・0%(4560人)増加して2年連続15万人の大台を超えた。また総検挙人員に占める少年の割合は48・5%で、前年(48・7%)に引き続き高水準で推移している。
 さらには、14歳から19歳までの少年人口1000人あたりに占める刑法犯の補導(検挙)人員は16・9人で、前年に比べ0・8ポイント増加。少年非行の戦後第3のピークの・高原期・にあった昭和61年以降の最悪を記録した。

 刑法犯少年の年齢別構成比を見ると、最も多いのが16歳の23・8%(3万7416人)、次いで15歳23・4%(3万6848人)、14歳18・6%(2万9276人)と続いている。また学識別ではトップが高校生で43・9%(6万9157人)で圧倒的。次いで中学生28・1%(4万4197人)となっており、前年と比べて有職少年を除いてすべての学識で増加したのが特徴だ。
 罪種別内訳では最も多いのが窃盗犯で、全体の63・4%に当たる9万9768人。次いでその他刑法犯が23・5%、(3万6950人)、粗暴犯が11・0%(1万7321人)、凶悪犯1・4%(2197人)と続いている。
 このうち凶悪犯(殺人、強盗、強姦、放火)は、昭和50年以降最悪を記録した前年に比べて66人(2・9%)減少したものの、2年連続して2000人を超え依然として高水準で推移している。これを罪種別で見ると、殺人(検挙・補導人員115人、対前年比55・4%増)と強姦(同455人、同13・5%増)が増加、強盗(同1538人、同8・2%減)と放火(同89人、21・2%減)が減少している。
 また粗暴犯(暴行、傷害、脅迫、恐喝など)の検挙・補導人員も前年に比べて660人(3・7%)減少したものの過去10年間では平成元年、平成9年に次いでワースト3となっている。

 この凶悪犯と粗暴犯について「人を死に至らしめる犯罪(殺人、強盗殺人、傷害致死)」と「財物を目的とした犯罪(強盗、恐喝)」に分けて見た場合、前者が284人で前年に比べて111人(64・2%)と飛躍的に増えている。後者は7665人で前年比4・6%減少している。
 こうした凶悪・粗暴な非行に発展しやすい「ひったくり」の増加も顕著。平成10年の少年による「ひったくり」の検挙・補導人員は1871人で、前年に比べ303人(19・3%)も増加している。これを平成元年の検挙・補導人員と比べると過去10年間で実に3・1倍にもなる。
 一方平成10年の少年による覚せい剤乱用の検挙・補導人員は1069人で、前年に比べ527人(33・0%)減少し、平成6年以来4年ぶりの減少となったが平成7年以降4年連続して1000人を超えており、依然として予断を許さない情勢にある。

 学識別では、高校生の検挙・補導人員が98人と、前年に比べて121人(55・3%)の大幅な減少を示し、中学生についても39人と前年に比べて4人(9・3%)減少しているが、平成元年の検挙・補導人員と比較すると、過去10年間で高校生4・7倍、中学生2・4倍という数字だ。
 校内暴力事件のうち教師に対する暴力事件は、件数446件、補導人員569人で、前年と比べて78件(21・2%)、40人(7・6%)それぞれ増加。被害者数も588人と前年と比べて85人(16・9%)増加している。
 女子についてはすべての罪種で増加しており、平成10年に刑法犯で検挙・補導された女子は4万114人で前年対比1692人(4・4%増)で、昭和63年以来10年ぶりに4万人を突破。昭和63年、昭和58年に次ぐ戦後ワースト3となった。また刑法犯少年に占める女子の割合は25・5%で戦後最高を記録した(昭和63年22・3%、昭和58年20・8%)。罪種別では傷害とひったくりがそれぞれ対前年比37・5%増、31・4%増と急増している。

(教育家庭新聞99年4月17日号)