開発教育に関するアンケート

教師の認知度一割

 国際協力事業団(JAICA)では、「開発教育支援のあり方」について、昨年11月から今年の1月にかけて全国の学校関係者を対象に行った5000通規模のアンケートの集計結果を報告書としてまとめた。
 これは、現在の地球規模の問題への理解など開発教育が今日ますます必要とされている状況に鑑み、開発教育の担い手による、活動の現状と現在かかえている課題、さらにその課題の解決のために何が必要か、政府開発援助関係機関等の開発教育の支援者にどのような支援をもとめているのかについてのニーズを把握することが目的。また、学校現場だけでなく、全国のNGO、地域国際化協会、教育委員会、教材・教科書出版会社についても、ニーズ調査のためインタビューやアンケート調査を実施した。
 学校教師へのアンケートは、全国から無作為に抽出した分と、作為的に開発教育を実践している教師から抽出した分により構成されている。無作為調査の回収率42・4%、ニーズ調査は43・6%であった。

 開発途上国をめぐる問題を学校等で取り上げているかという設問で、「よく取り上げる」「ときどき取り上げる」を合わせて、38%、「めったに取り上げたことがない」が22%であった。無作為調査では、開発教育をめぐる問題について取り上げている教師は全体の4割近くである。一方、生徒たちに発展途上国をめぐる問題を教えることの必要性を感じるかという問いでは、「大いに必要だ」が19%、「必要だ」が74%。「あまり必要と思わない」6%、「必要と思わない」が1%。必要性があると感じている教師が多く存在するにも関わらず、実践できていないのが現状であり、実践できていない理由として、「時間がない」、「情報が少ない」、「教材が足りない」の3項目が多くの回答を占めていた。
 さらに、この問題に取り組む場合、どのようなものが必要になると思うかの問いに対し、「開発途上国事情」207件、「実践例」171件、「人材育成・研修」165件、「教材」「資金」159件、「やる気」146件の順。全体の教師の課題はほぼすべての項目について同じくらいの回答であったため、情報、教材、人材、資金等、全ての強化が必要なことがわかる。これはニーズ調査でもほぼ同じ結果が出ている。

 「どの用語を聞いたことがありますか」の問いには、「開発教育」の認知度は、全回答者の1割であり、あまり高いといえないが、「国際理解教育」「平和教育」「人権教育」の認知度はどれも6割以上と高い。一方、開発途上国をめぐる問題について取り組んでいる教師も全体の4割である。よって、開発教育という用語は知らなくても、内容は開発教育について行っている教師がいることがわかる。
 ニーズ調査では、将来取り組むべきと考えている課題について「ネットワークづくり」、「教材づくり」、「人材育成」がそれぞれ200件近くを占め、それら3項目を合計すると回答数の大部分となっている、特にネットワークづくりの回答数が最も多くなっている。
 無作為とニーズ両方に対して「あなたは開発途上国をめぐる問題を学校等で取り上げていますか」の問いを教科別で行ったところ、よく取り上げる、ときどき取り上げるを合わせて、社会科が最も多く75%、次いで英語科46%、保健体育科33%、芸術30%、国語科と理科が29%。社会、英語でよく取り上げている一方、理数系での取り組みが数学で20%未満、理科で30%未満と比較的少ない結果。

 ニーズ調査では、保健体育科100%を筆頭に、社会科93%、国語科74%、数学科、英語科、芸術科72%、理科70%と全ての分野において6割以上の教師が取り上げている。この結果は、教科に関係なく、開発教育に取り組むことが可能であることを表している。
 学校教師に対するアンケート結果の中で興味を引いたのは自由記述の問い「総合的な学習の時間」に対する期待や不安、問題点だ。「単一教科では扱うのに限界のある問題を総合的に捉えることができる」「教員が外へ向かって活動する姿勢をもつようになる」「地域での体験学習が増える」「受験制度の大改革」といった期待がいくつかある一方、不安や問題点として「教師個人の力量とやる気の差を感じる」「学校間格差が生じる」「学校全体の取り組みの中にどれだけ自分の考えが反映されるか不明」「学校独自の取り組みになるので教材開発の負担大」「生徒数、教員定数が変わらない限り、自由裁量が多い分野を充実させるのは困難」「結局マニュアル化されるのではないか」「見合うだけの教材・教具が準備されていない」「小・中・高の連携がうまくいくのか」「子どもの学力低下につながらないか」「理数の軽視。基礎基本をどうおさえていくか」「受験を控えた保護者と総合学習のニーズが合致するか」「学ぶ側の意識として入試科目以外は軽視」など、切実な問題が次々とあげられていた。総合的な学習に対しては、期待する部分よりも、戸惑い、不安といった声が教師の中で多いことがわかる。

(教育家庭新聞99年4月17日号)