4月2日は、2007年の国連総会において「世界自閉症啓発デー」として決議された日。以来、全世界で自閉症を理解してもらうための様々な取り組みが行われている。日本でも、自閉症啓発デー・日本実行委員会が組織され、自閉症をはじめとする発達障害について、正しい知識の浸透を図ると共に、社会全体の理解が進むように、シンポジウムなどを通じた啓発活動が開催されている。
4月2日には、啓発イベントとして「ライトアップブルー・イン・ジャパン」が行われ、さっぽろテレビ塔、東京タワー、明石海峡大橋など17か所が、ブルーにライトアップされた。
各地の点灯式には、各地の自閉症協会の関係者などが出席し、自閉症啓発デーをPR。東京タワーの点灯式には、小宮山洋子厚生労働大臣も出席し、ブルーライトの点灯スイッチを押して、自閉啓発に政府として取り組む姿勢を示した。ライトアップブルーは08年にニューヨークで始まり、今年は48か国2000か所以上で行われた。
避難所に入れない
自閉症者と家族
シンポジウムで報告
自閉症者による絵や音楽の発表に拍手があふれた |
4月7日には都内で「世界自閉症啓発デー2012・シンポジウム『私たちの育ちを信じて!愛して!』」が開催され、500名を超える出席者が集まった。
シンポジウムでは、昨年に引き続き東日本大震災での避難生活の体験が報告された。自閉症者は環境の変化に対応できないケースや集団生活が不得手なケースもあり、多くの自閉症者とその家族は避難所に入ることを最初から諦めて、車中生活を送ったことが報告された。報告者の一人は、震災後の混乱のしわ寄せをより強く受けたのが自閉症の人々だったと述べた。
混乱した避難所などで、周囲の人に自閉症の特徴などを理解してもらうことは難しいことを考えると、やはり自閉症者が落ち着いて過ごせる避難所がほしい、という意見が出された。
また、自閉症者の長所をより広く理解してもらうために、「当事者によるアート&ミュージック」の発表が行われ、自閉症者が描いた油絵や、ピアノの演奏などが披露された。出席者の素晴らしい絵画や楽器演奏に、大きな拍手が贈られた。
自閉症にやさしい街を
目指す横浜市の活動
自閉症の教育推進を
3月31日には横浜で、「世界自閉症啓発デーin横浜〜これからの自閉症教育推進に向けて〜」が開かれた。
基調講演を行った佐々木正美特任教授(川崎医療福祉大学)は、「自閉症の人ほど、周囲の無理解で苦しみ、これほど不幸になる人はいない。そして理解者に恵まれて生きる時、これほどすばらしい能力を発揮する人はいない。幸せと不幸の落差がこれほど大きい人はいないのだ。自閉症スペクトラムの人の特性を変えようとしてはいけない。周囲の人が自閉症スペクトラムの特性やその人の特性をしっかりと理解し、その人に最適な支援をするべきだ」と述べた。
横浜市は「自閉症にやさしい街」として全国に知られるようになることを目指しており、そのために、自閉症当事者や家族への支援を行っているほか、昨年度は学校へ教職員向けに自閉症の啓発パンフレット「自閉症教育の手引き」を配布したことが報告された。
【2012年4月16日号】