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時代の変化に対応を
全国養護教諭連絡協議会

設立20周年「第17回研究協議会」を開催

  設立20周年の全国養護教諭連絡協議会(以下、全養連)は、2月24日、東京・港区のメルパルクホールで「第17回研究協議会」を開催。大会主題に「時代の変化に対応した養護教諭の役割を追究する」〜養護教諭のいまとこれから〜を掲げ、特別講演、基調講演、フォーラムが行われた。

  開催にあたり全養連の堀田美枝子会長は、「近年の少子高齢化、情報化による社会環境や生活環境の急激な変化は子どもたちの心身の健康に大きな影響を及ぼしています。また、昨年の東日本大震災・予想を超えた大津波・原発事故など未曾有の大災害は私たちの生き方に大きな影響を及ぼしました。未来ある子どもたちのために私どもは何をすべきか、中央教育審議会・学校保健安全法での指摘されました点をもとに研鑽していきたいと思います」とあいさつ。

■2万8千人の総意の反映を
平成3年に発足さらなる研鑚
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全国から多くの養護教諭が参加

  フォーラムでは全養連初代会長の中村道子氏がコーディネーターとなり、中村氏から全養連20年のあゆみが紹介された。

  全養連は平成3年に開催された「養護教諭制度50周年記念全国大会」の前日に発足。他の教育団体と同様に公的な団体として、現在の文科省スポーツ青少年局の要望団体となり、要請活動、調査研究、全国大会の後援団体となった。

  平成9年には保健体育審議会の答申に中村会長が参画し、全国の実態調査と児童生徒の健康実態、養護教諭の職務の現状などを提示し、その結果を答申に反映することができた。現在、4つの活動目標に沿って運営が行われ、会員数2万7823名、52研究会の総意を反映させることが、重要となっている。

  その後、3名のシンポジストが各校の取り組みを発表。

  静岡市立西豊田小学校の細谷恭子養護教諭は、これまで勤務した3校での活動を振り返った。

  「3校目で初めて小学校勤務となりましたが、児童が熱中症で倒れた際に、体温計やペンを持っておらず救急処置に手間取ってしまいました。そこで救急処置の見直しを図り、チェックシートを用意し、ケガの状態をチェックするようにし、来室してからのケガの経過を時間ごとに追うようにしました」と失敗を糧に態勢を見直したという。

  長野県長野ろう学校の中村まゆみ養護教諭は、62名の幼児・児童生徒が在籍している特別支援校の養護教諭としての姿勢を次のように述べた。

  「ろう学校の生徒は、聴こえない、聴こえにくいという特性からコミュニケーションが困難で、社会性が育てにくいと言われていますので、子どもたちの社会性を育てることを意図した指導が必要です。家庭や地域と連携して他者との関係の中で、自分を見つめ、人と豊かに関わる経験を通して自己肯定感を育てたいと思います」。

  また、東京都葛飾区立南綾瀬小学校の星埜京子主幹教諭は、平成24年度には東京都で181人となる主幹教諭としての養護教諭の役割を紹介。

  主幹教諭は学校運営が円滑に進むように校務を統括処理するリーダー的存在で、指導監督や調整、人材育成、副校長の補佐などの役割を果たす。

  「自分の意見を学校運営に取り入れてもらうことが、健康教育の早道と考え主幹教諭になることを決意しました。主幹教諭になり、学校が抱える課題も見えてきました。養護教諭だけでは解決が難しいことでも、管理職と共同して推進することで、子どもや学校が変わる大きな力となります」と学校経営に参画する意義をアピールした。

人と人をつなぐ養護教諭 ―全養連/研究協議会  特別講演・基調講演

 2月24日に都内で開催された全国養護教諭連絡協議会の「第17回研究協議会」から、特別講演(NHK解説委員で「週刊こどもニュース」の2代目お父さん/鎌田靖氏)及び基調講演(文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 健康教育企画室健康教育調査官/岩崎信子氏)を紹介する。

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NHK解説委員
鎌田靖 氏
■被災地での心のケア 対応者が圧倒的に不足
今、子どもたちに伝えたいこと

 特別講演のテーマは、「今、子どもたちに伝えたいこと」。鎌田氏は、東日本大震災関連の番組制作を通じて感じたこと述べた。

  震災以降、NHKスペシャルでは毎月11日前後に「シリーズ東日本大震災」として、被災地の様子などを取材して放送してきた。その中で鎌田氏は震災や津波で家族を失った子どもたちに出会い、周りの大人が、どのように接すればよいか考えるようになった。

  「以前と比べると震災遺児を支える制度は整ってきました。しかし、経済的支援だけを充実させれば良いというものではありません。被災地では親も心に傷を負い、子どもの心のケアにあたる人が圧倒的に不足しています。専門的な知識が無くても、周りの大人が傷ついた子どもに声をかけてあげるべきです」

  今回の震災では多くの人が亡くなり、人と人の関係性が断ち切られたが、そこからどうやって関係性を回復していくかが重要な課題となる。

  「今は子どもたちのために大人が何をすべきか考える時。養護教諭は子どもと特別な関係性を持てる立場にあります。学校現場だけでなく、プライベートの場でも人と人の関係性の再構築について考えてください」と会場に呼びかけた。

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文部科学省 健康教育調査官
岩崎 信子 氏
■健康相談の留意点は5つ コーディネーターとなって
健康教育の推進と養護教諭の役割

 基調講演は「健康教育の推進と養護教諭の役割」をテーマに、中教審答申や学校保健法の改正を踏まえながら、健康相談の進め方などについて岩崎氏が語った。

  健康相談を実施する上での留意点として挙げたのは以下の5点。

(1)学校保健計画に健康相談を位置付けて計画的に実施する(2)学校医・学校歯科医・学校薬剤師の医療的見地から行う健康相談は事前の打ち合わせを充分に行い、相談の結果について共通理解を図る(3)健康相談の実施について周知を図り、相談しやすい環境を整える(4)相談場所については相談者のプライバシーが充分に守れるように配慮する(5)継続支援が必要な場合は校内組織及び必要に応じて関係機関と連携して実施する。

  岩崎氏は「養護教諭は児童生徒の心身の健康問題を発見しやすい立場にあるので、いじめや児童虐待の早期発見や早期対応が求められます。また、健康相談や保健指導の必要性の判断、受診の必要性の判断、地域の関係機関等との連携におけるコーディネーターの役割が求められます」と健康相談時に養護教諭が果たすべき役割を紹介した。

【2012年3月19日号】

教育家庭新聞

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