11月8日、9日、「第62回全国学校給食研究協議大会」が広島県広島市で開催され(主催/文部科学省、広島県教育委員会、広島市教育委員会、全国学校給食会連合会、(財)広島県学校給食会)、「文部科学大臣表彰」の表彰式(11月21日号掲載)、文科省説明、実践発表、特別講演が行われた。広島市立皆実小学校の実践発表を紹介する。
左から清水陽子校長、栗本淳子栄養教諭 植田浩史教諭 |
皆実小学校からは、「『自主的・実践的に食生活を営んでいくことのできる児童の育成』〜学校教育全体で食育に取り組むことを通して〜」について、清水陽子校長、植田浩史教諭、栗本淳子栄養教諭が発表した。
独自の評価シート 知識定着目標80%
同校の食育推進担当は、学級担任と栄養教諭の複数体制で、平成16年度以降、文科省の委嘱事業を受けて食育に取り組み、年平均7・5%の残さい率が、現在では3%台を推移しており、一定の成果があがっている。
しかし、朝食内容に課題があったり、地場産物を5種以上知っていると答えた児童が62・3%にとどまるなどの実態と課題があったため、さらなる食の指導の推進を図ってきた。学校独自に学年ごとの評価シートを作成し、食に関する知識定着の目標値を80%以上として検証している。
その結果、3年生の知識定着度は78・6%、全学年の平均は65・5%で、自主的・実践的に食生活を営む児童の育成にはつながっていないと考え、(1)教職員の共通認識(2)教科等の指導と給食時間の継続的な指導(3)家庭や地域への啓発の工夫について、実践を進めてきた。
担任が調理体験 調理員を知る
教職員の共通認識については、昨年度は給食委員会の活動を担任が児童と体験。また、夏休みに栄養教諭、給食調理員から献立のねらいや作業工程、衛生管理などについて説明を受け、今年度は実際に調理も体験。
「子どもたちに給食調理員の工夫や気配り、苦労などを話すときに自分が感じたことをストレートに話すことができ、貴重な体験でした」と植田教諭は話す。
広島市には独自のカリキュラム「言語・数理運用科」があるが、その中で地場産物を使った広島らしいメニューを考える学習を行っている。考えた献立は栄養教諭と相談しながら家庭科で調理し、学校給食にも取り入れられた。「カキのみぞれわん」は、市の統一献立として取りいれられた。
また、担任が献立のねらいを深め日々の指導に活用できるように、栄養教諭が日めくり配膳表を作成し配布。今年度はさらに知識の定着を深めるために、献立の意図を強調する掲示用カードを作成し配布した。
児童・保護者共に 食育への高い評価
児童が地場産物に目を向けるようになるためには、家庭、地域との連携は欠かせない。外部機関の協力を得て、保護者に試食会を実施。また、夏休みには給食室で親子料理教室を行い、給食献立を調理。夏場の暑いなかでの調理を体験し、調理員の苦労を知り感謝の気持ちにつながると考えた。
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「様々な取り組みの積み重ねで食の大切さに対する意識が高まったと感じた出来事がありました」と、栗本栄養教諭があるエピソードを紹介した。それは、市主催で子ども食育会議が行われたときのこと。6年生が市全体で「完食週間」を取り入れることを提案し、今年度の残さい率低減の取り組みに取りいれられた。
また、食の取り組みに関しての児童アンケートで、「食べ物の大切さに気づき、食べ残しをしないように気をつけることができた」という項目で、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計が93・2%となり、保護者アンケートで「食育の成果が現れている」かという項目について、「そう思う」「どちらかというとそう思う」の合計が89%と、いずれも高い評価を得た。
一定の成果があがっている一方で、課題も残る。清水校長は「より組織的に動くためには、全教育活動において食に関する指導を位置づけること、食育推進担当を担任と栄養教諭の複数体制とすることが有効であると捉えています。長年食育推進に取り組んできた本校として、その有効性を広めていく役割を果たす必要があると感じています。
また、授業展開にも工夫を加え、委員会活動等で自主的に発案・計画・実践できるように支援する体制の見直しを図っています」と述べた。
その他、外部講師の活用に関する十分な効果検証や保護者へのさらなる食育の啓発など、様々な見直しを図っている最中だという。
【2011年12月19日号】