今年8月16日から9月6日まで、マレーシア政府観光局が10名の日本人大学生を約3週間マレーシアに派遣し、国際化にふさわしい人材育成を目的に行われた「ルックマレーシアプログラム」。その集大成として、先日JATA主催の旅博で「日本とマレーシアの明日への提言」が発表された。その他にも今月開催されたロングステイフェアにおいて、マレーシアの魅力について代表4名が発表し、日本とマレーシアの架け橋として活躍の場を広げている。学生4名と同観光局マーケティングマネージャーの徳永誠氏に話を聞いた。
マレーシアで現地関係者との記念撮影 |
今年初めて行われた「ルックマレーシアプログラム」は、18歳から25歳までの首都圏に通う大学生を対象に募集が行われ、147名の応募から10名を派遣。ホームステイや企業訪問、現地校での授業や学生たちとの交流、様々な現地での体験を行った。
かつて同国では、日本や韓国の勤労倫理や高い技術を学ぶことを目的とした「東方(ルックイースト)政策」を行うことで、経済や社会の発展を遂げてきた。一方日本は、バブル崩壊後の経済的停滞や国際競争力の低下、それに追い打ちをかけた東日本大震災の影響で、経済や社会が困難な状況にさらされている。
勢いのよいアジアを若い世代に見せたい
11月12日に行われたロングステイフェアでマレーシアについて紹介する東京工業大・山浦隼人さん、東京都市大・田谷圭佑さん、日本大・小林礼奈さん、学習院大・宮脇しおりさん(左から) |
そこで「将来の日本を担う若い世代に勢いの良いアジアをみていただこうと思いました」と徳永氏が話すように、このプログラムが実施された。
学生のリーダーを務めた東京工業大学の山浦隼人さんは「将来アジアでの活躍を視野にいれていたので、参加を希望しました。参加した今、世界中のすべての人のために活躍したい、アジアが世界の中心になると思いました」とさらなる挑戦の気持ちが湧いたという。
様々な学部から参加した10名にとって、それぞれの専門分野に直結するプログラムばかりではなかった。しかし、現地にある日本企業や、同世代の仲間との出会いは、日本の今後の発展や産業の在り方について考える機会になった。
近代的な建物と昔ながらの屋台がひしめき合う活気のある街の様子、想像以上に成長している都市部で様々な人種が混在している様子を視察。日本大学の小林礼奈さんは「様々な人種の共存は難しいと思っていましたが、マレーシアに住む人たちはとても柔軟でした。日本人に足りない部分かもしれない」と感じた。
学習院大学の宮脇しおりさんは、「プログラムに携わる様々な関係機関の人と出会い、海外と日本の架け橋となる具体的なイメージが湧きました」。金銭面の問題で憧れの日本への渡航を断念せざるを得ない人が数多くいることを知った東京都市大学の田谷圭佑さんは「航空会社に勤めて様々な人に平等な機会を与える人になりたい」と目を輝かせる。
旅博での発表など、彼らの活躍の場は広がっている。「アウトプットすることで、改めて人に伝えることの大切さを感じています。他国の人が日本を学ぶという時代ではなくなってきていることを実感するために、直接現地を見なければいけません」と山浦さんは危機感を持つ。
日本に危機感を持ち国民の意識に変化を
近年、日本から海外へ出ない学生が多いと言われている。そんな状況に徳永氏は「学生たちも不安感はあっても危機感はないことが多いでしょう。彼らの経験が日本国民の意識に波を起こしてほしい」と願う。次年度も同観光局はプログラムを続けていく方針で、次回は関西圏の学生の参加も視野にいれていく。
【2011年11月21日号】