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成長期の児童に「ニジマス」を

低カロリー・高たんぱくな食材

 今年で6年目を迎えた全国養鱒振興協会(小堀彰彦会長理事)が行う、小学校へ向けたニジマスの特別提供事業。国産ニジマスの栄養的な価値やおいしさ、そして養殖業について学校給食を通じて学んでもらうことを目的に行われている。今年は、東京都小平市立小平第六小学校(若林彰校長)でニジマス博士こと同協会の岩城善宜常務理事による淡水魚の授業と併せて、学校給食でニジマスが提供された。

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60cmサイズのニジマスを持ち上げてよく観察
ニジマス博士の岩城氏、 白井栄養教諭、
小堀会長理事 (下の写真右から)
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 ニジマスと言えば、キャンプや釣堀で釣る10数センチのサイズを想像する人が多いが、静岡県など養殖業が盛んな地域では、60センチ級のサイズを切り身にして、学校給食で提供することも多い。塩焼きやムニエル、から揚げなど和食・洋食・中華と様々な形で調理ができる。

  9月22日の3校時、5年生の社会科で行われたのは、ニジマスを始めとする淡水魚に関する授業だ。同校では社会科の水産業を学ぶ単元のなかで、すでに海の魚について学んでいたため、白井秀子栄養教諭の「せっかくなら淡水魚についても専門家から教えてほしい」という思いに同協会が応えた。

  岩城氏は、ニジマスとは「魚」偏に「尊」と書くこと、冷たい水を好む魚であり、ニジマスが生きていくためには、1日に10〜15万トンの豊富な水量と酸素が必要となると説明し、そこで行われている養殖の様子を、写真で紹介した。

  「みんなが知っているニジマスも、3年経つと50センチになるんだよ」と用意したニジマスを見せると、児童からは大歓声が沸き起こる。

  そしてニジマスの栄養価は、DHAが552ミリグラム含まれ(100グラム中)、全魚種中7位。なかなか摂ることのできないビタミンB12も多く摂ることができる上に、低カロリー高たんぱくと成長期の子どもたちには嬉しい食材なのだ。

  また、今回の授業の目的の一つ、淡水魚と海水魚の違いについては、淡水魚は水をどんどん吸収するため尿を多く出すが、海水魚はたくさんの水が体から出てしまうため、海水を飲んで体を調整していると説明した。

  また、日本人が魚を食べる機会が減っていることについても言及。

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皮から「おいしい」と食べる児童が多数(上)
この日は「照り焼」で提供。
形も崩れず扱いやすい
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  厚労省の調査によると、平成18・19・21年度は魚介類と肉類の摂取量が逆転して肉類が多く、21年度は顕著だ。「世界の人口は40年後に91億人になると言われていますが、その時、1人あたり1年に約17キログラムの魚が必要です。しかし、日本では東日本大震災で魚をとるところ、加工するところが被害を受けました」と話し、魚を大切に食べることを児童に期待した。

教科と関連付けてより深く学習

 その後、ランチルームに5年生3クラス全員が集まり給食を食べた。ニジマスは40グラムの切り身を使った「照焼き」にし、そのほかは「五目豆ごはん」「秋野菜の沢煮椀」と和食献立だ。

  ほとんどの児童は皮もペロリと食べ「鮭と似てるね。おいしい」「1尾の塩焼きを食べたことはあるけど、切り身でこうやって食べたのは初めて。また食べたいな」などと好評。

  学年主任の田村栄美子教諭は「授業をやってからの給食は効果がありますね。この『鱒』という漢字は忘れないでしょうね」と児童の様子を見守っていた。

  また、足立邦子副校長は「養殖というものがどんなものか分からない子も多かったと思います。ニジマス博士の話を直接聞いたり、写真を見せていただいたりして、海の魚と養殖との違いを良く理解できたと思います。教科と関連付けて実施したことで、より深く心で感じる学習につながったことでしょう」と、食育と教科学習を関連付ける重要性にふれた。

  栄養教諭となり3年目を迎えた白井栄養教諭は、「ただ給食で出すだけではなく、授業も実施したことで特に5年生は"マス"というものを認識することができたことでしょう。給食には海の魚を使うことがほとんどですが、流通に乗ることで、学校給食で使う機会が増えるかもしれません。脂がのっていてとてもおいしいお魚でしたね」と、今後の学校給食における取り扱いの可能性にもふれた。

【2011年10月17日号】

教育家庭新聞