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【PTA特集】活動の強化
社会性のある子ども達をはぐくむ

第59回 日本PTA全国協議会インタビュー

震災を機にPTAを見直し 人と人が「舫い」あう活動に
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(社)日本PTA全国協議会
相川敬 会長

 新学習指導要領が本年度より小学校で、来年度には中学校で始まる。そうした中、学校を取り巻く状況は大きく変化しており、PTAも変革の時なのではなかろうか。8月26日・27日に広島県で行われる「第59回日本PTA全国研究大会」の開催を目前に、(社)日本PTA全国協議会(以下:日P)の相川敬会長に今後のPTAのあり方や、広島大会への思いを聞いた。

‐‐ゆとり学習が見直され、学校での学習内容が増えましたね

  次年度、中学校で新学習指導要領に準拠した教科書が使われるようになります。先日、新しい教科書を見る機会がありましたが、2、3割厚くなったように見えました。教えなければならない内容が多くなり、先生方の負担も増えるでしょう。教科書の内容を全て教えることも、以前の教科書に比べて大変になると思います。

  そして、当然、子ども達の負担も重くなります。しかし、学習内容を理解する速度は、一人ひとり異なりますから、カリキュラムを終了することを優先すると、子ども達の理解が不十分になってしまわないかと懸念しています。学校、先生方には、それぞれの子どもにあった適切な指導が行われることを望みます。

‐‐教科学習以外の学習も、学校で積極的に取り組まれていますがどのようにお考えでしょうか

  中学や高校を中心に職業教育が取り入れられていますが、私は小学校でももっと職業教育を行った方が良いと思っています。社会には様々な職業があり、実際の社会はそれら職業によって成り立っていることが、今の社会では分り難くなっています。私が子どもの頃は、近所のあの人はあんな仕事をしている、というように仕事と社会との関係が分りやすかったのですが、今では友達のお父さんがどんな仕事をしているのか分らないし、自分の父親の仕事でさえ社会とどのように結びついているのか分らないことも多いのが現状です。

  また、今の子ども達は外に出て、地域社会の中で遊ぶことも少なくなっています。学校に行って、塾や習い事に行って、家でゲームをしてという生活パターンでは、社会との接点が少なすぎます。社会との接点が少ないことが、社会性を身に付けずに育ってしまうことにもつながっています。

  聞いた話ですが、新入社員が固定電話に出られないということがあるそうです。固定電話がない家庭が増えてきて、固定電話を使った経験がないまま社会人になってしまっているからでしょう。携帯電話は自分の電話番号を知っている人からしかかかってきませんが、会社には見ず知らずの人から電話がかかってきます。その時、どのように対応すれば良いのかが分らない、応答、取次ぎの基本的なことすら学ばないで、社会に出てくることになります。

‐‐東日本大震災を受け、今大会は何か変化があるのでしょうか

  広島大会を開催するかしないかで、意見が二分しました。しかし、東北ブロックの会長から、被災者は元気に前向きに生きていることを発信したい、全国から被災地に寄せられた応援に応えたいので、大会はぜひやって欲しいと言われました。

  そこで、今回のテーマは「命の絆」としました。

  その時私は「舫う(もやう)」という言葉を連想しました。船を舫う、舫いあうと使います。大きなタンカーでも、小さな船でも、綱で岸や船同士をつなぐことを指す言葉です。船同士が舫いあうためには、相手を信頼すること、相手の船が流れ出したりしないという前提で、船を舫う、互いにつながりあいます。つまり、舫うということは相手を信頼することが前提となっています。

  そして、船を舫う場合、岸に近い側に大きな船を、外側には小さな船をつないでいき、一番小さな船は最後につなぎます。大きなしっかりとした船が内側にいて、そこへ舫いあっていくことが大切です。その様子は、大人がしっかりと内側にいて、そこに子どもがつながっている様子と重なります。「もやう」という言葉の意味を調べると、「共同で物事を行う」という意味もあるようです。

  PTA不要論が唱えられたり、活動が形骸化していると言われることもありますが、今回の震災がPTAの見直しのきっかけにもなりました。私は、PTAとは、子ども達に特化した活動を行い、少人数教育に強い関心を持ち続けている意志の強い団体だと思っています。そして、PTAが持っている力が動き出せば、大きな成果をあげることができます。今こそ力をあわせる時だというメッセージを、広島から発信したいと思います。

‐‐今後日Pとして何か支援をされていきますか

  現在、日Pでは被災した子ども達をどう支えていくか検討しています。委員会を立ち上げて被災した学校のPTAの意見を集め、長期にわたる対応ができる仕組みを作ります。時間の経過と共に、被災者に対する関心が薄れる時期がどうしても訪れます。ですから、長期の支援が絶対に必要となります。被災児童・生徒に対して、行政は物やお金の支援をし、直接子どもと接している人が被災児童・生徒の心の機微を感じ取ってあげ、支えてあげなくてはならない。PTAができることは、もっともっとあると思います。

【2011年8月22日号】

教育家庭新聞