非常事態後の防衛目標
東京電力の福島第一原子力発電所の事故は、風によって放射能が運ばれることで、福島県内だけでなく千葉県や茨城県内のホットスポット、関東圏や中部地方のお茶などの生産地など広範囲に悪影響を及ぼしている。
ここで安全であるかどうかの判断の拠り所となるのが人体に影響がないとされる被ばく総量の基準だが、テレビなどでは年間20mSv(ミリシーベルト)、10mSv、1mSvなどいろいろな数字が挙げられている。
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国際的にはICRP(国際放射線防護委員会)が定めている基準、年間1mSvが安全基準となっている。これに対し、我が国政府はICRPが3月21日に発表した「福島原子力発電所の事故について」の勧告文書に「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1〜20mSv/年の範囲で考えることも可能」(原子力安全委員会、4月19日発文書)と書かれているとして、当初は20mSvまで許容範囲という対応を取っていた。
しかし、先のICRP勧告には、非常事態後の防護の取り組み目標として「長期目標として年間1mSvとすることを勧告する」という文言が1〜20mSvを許容するとした文書に続けて示されている。ところが原子力委員会、及びそれを参考にした文部科学省の通知文書(4月19日発)では「長期目標1mSv」の文言には触れられていない。(http://www.icrp.org/news.asp)政府の20mSvまで許容するという基準に対しては、福島県の保護者が文部科学省を訪れて、その撤回を申し入れるなど、反発が強まった。
なお、文部科学省はその後5月27日に、年間1mSv以下を目指すと変更している。
【2011年7月18日号】