メタボリックシンドロームの認知・食育推進に関わるボランティア
6月の食育月間は、全国で様々な食のイベントが繰り広げられており、6月18日、19日には静岡県三島市で第6回食育推進全国大会を開催。また、平成22年度「食育白書」が公表され、国の食育推進施策の現状が紹介された。平成17年6月に「食育基本法」が施行され、翌18年3月には「食育推進基本計画」が作成され平成22年度までの5年間の食育推進施策についての基本的な方針と9項目の目標値が掲げられた。この「食育白書」には、この5年の施策の成果、さらに今年度から5か年にわたる「第2次食育推進基本計画」についても紹介されている。
食育白書今年度の「食育月間」は、(1)食を通じたコミュニケーション(2)バランスのとれた食事(3)望ましい生活リズム(4)食を大切にする気持ち(5)食の安全の5つが重点的に普及啓発を図る事項として掲げられ、現在様々な活動がなされているところだ。
昨年度は、佐賀市で食育推進全国大会が開催され、2日間で約4万3000人が来場。全国大会では、食育推進に関するポスターの表彰式が毎年行われ、今年度は茨城県・筑西市立養蚕小学校の小林美悠さん、東京都・多摩市立鶴牧中学校の円山真緒さん、兵庫県西宮市立西宮高等学校の大勝詩織さんがそれぞれ各部門の金賞となった。
その他、食育に関して特に優れた取り組みを表彰し、その内容を情報提供することにより、一層の食育推進を図るために、内閣府では「食育推進ボランティア表彰」を実施し、総務省では「過疎地域自立活性化優良事例表彰」を、文科省は学校給食の普及と充実に優秀な成果をあげた学校、共同調理場、学校給食関係者及び学校給食関係団体について、文部科学大臣表彰を実施。厚労省は栄養改善及び食生活改善事業の普及向上等に功労のあった者及び地区組織等について、栄養関係功労者厚生労働大臣表彰を実施し、農水省は「地域に根ざした食育コンクール」などを行う。
また、食をめぐる国民の意識とその実践の現状について毎年調査を行っているが、平成22年度は新たに朝食を食べる利点を調査した。
体調や生活の質の向上を実感 「朝食の利点」
その結果、朝食を毎日食べることは「生活のリズムがとれる」(74・1%)、「体調が良い」(55%)、「朝、排便がある」(40・5%)、「家族とのコミュニケーションがとれる」(30・5%)など、体調や生活の質を向上させると感じている人が多いことがわかった。
食生活と健康状態について認識が高まる一方で、食育推進基本計画の達成状況は平成23年3月現在で、9項目のうち「内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)を認知している国民の割合」及び「食育の推進に関わるボランティアの数」のみが目標値を達成、他の7項目については未達成だ。食育推進評価専門委員会では、この7項目について課題を述べる。
■食育に関心を持っている国民の割合(目標90%以上) 実際は70・5%で平成20年3月を頂点として、それ以降減少傾向にある。いかに国民の関心の底上げを図っていくかが課題。
■朝食を欠食している国民の割合(目標:子ども0%、20・30歳男性15%以下) 現状は子ども1・6%、20歳代男性33%、30歳代男性29・2%。大学・短期大学・専門学校において、学生生活への支援の観点から、健全な食生活の実践の重要性を呼びかける機会を設けることが期待される。
■学校給食における地場産物を使用する割合(目標30%以上) 26・1%で目標値を達成していない。学校給食における地場産物活用による効果とともに、安定的な供給への配慮も大切である。大都市圏と地方を同一に論じるのではなく、地域性への配慮が大切である。
■「食事バランスガイド」等を参考に食生活を送っている国民の割合(目標60%以上) 50・2%で目標を達していない。認知度だけではなく、活用度を高めていくためには、その活用方法の更なる検討が必要である。理解度を高めることも重要であり、ガイドがもっとわかりやすく、利用しやすくなるようにして、例えば、学校教育で活用できるようにすることも大切。
■教育ファームの取り組みがなされている市町村の割合(目標60%以上) 計画的になされている市町村の割合は31・7%で、目標値を達成していない。ただし、教育ファームの取り組みを行っている主体がある市町村の割合は79・3%。教育ファームは、農や食についての理解を深めるよい機会であり、ネットワークを拡大していくことが大切。
■食品の安全性に関する基礎的な知識を持っている国民の割合(目標60%以上) 37・4%で目標を達成していない。食品の安全性に関する基礎的な知識を持っている国民の割合が増加することを目指して、さらに食品の安全性に関する知識の普及を強化することが必要。
■推進計画を作成・実施している都道府県及び市町村の割合(目標:都道府県100%、市町村50%以上) 都道府県は100%だが、市町村は39・5%。市町村における推進計画の作成にあたっては、すでに作成している市町村の事例を提供したり、作成のメリットを広報したりするなどして、未作成の市町村に作成を促すことが課題。
家庭での「共食」通じて推進を 「第2次食育推進基本計画」
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これらの課題を踏まえ「第2次食育推進基本計画」は、コンセプトを『周知』から『実践』へとし、食育の推進に関する施策についての基本的な方針に(1)生涯にわたるライフステージに応じた間断ない食育の推進(2)生活習慣病の予防及び改善につながる食育の推進(3)家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進を掲げ、平成27年度までに達成するものとして次の11の目標を立てた。
■食育に関心を持っている国民の割合の増加 現状値70・5%→目標値90%以上
■朝食または夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数の増加 朝食+夕食=週平均9回→10回以上
■朝食を欠食する国民の割合の減少 子ども1・6%、20・30歳代男性28・7%→子ども0%、20・30歳代男性15%以下
■学校給食における地場産物を使用する割合の増加 26・1%→30%以上
■栄養バランス等に配慮した食生活を送っている国民の割合の増加 50・2%→60%以上
■内臓脂肪症候群の予防や改善のための適切な食事、運動等を断続的に実践している国民の割合の増加 41・5%→50%以上
■よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合の増加 70・2%→80%以上
■食育の推進に関わるボランティアの数の増加 34・5万人→37万人以上
■農林漁業体験を経験した国民の割合の増加 27%→30%以上
■食品の安全性に関する基礎的な知識を持っている国民の割合の増加 37・4%→90%以上
■推進計画を作成・実施している市町村の割合の増加 40%→100%
【2011年6月20日号】