多様な健康課題への組織的な対応の実践とコーディネーターとしての養護教諭の役割を追究するため、全国養護教諭連絡協議会による「第16回研究協議会」が、2月25日、東京・港区のメルパルクホールで開催され、養護教諭など多くの関係者が集まった。
「生き方、食べ方と子どもの健康」をテーマに特別講演を行ったのは、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授の安保徹氏。講演で安保氏は「自律神経のうち、交感神経の緊張が続く生き方をしていると、健康に悪い影響を及ぼす」と説く。
精神的なストレスだけではなく、冬の寒さやパソコンの使いすぎによる目の疲れも交感神経の緊張につながる。交感神経が緊張していると疲れが取れず、子どもでもストレスを感じると交感神経が緊張して歯ぎしりなどの症状が表れることがあるという。
一方で、副交感神経が過剰に優位になっても健康に障害をきたす。体を動かさない楽な生活をしていると疲れやすくなり、身体能力の低下に苦しめられる。あまり遊ばない子どもは副交感神経が過剰に優位になって、病気になりやすい。「甘いものを我慢するなどして、交感神経と副交感神経のバランスを取ることが大事です」と述べた。
基調講演では、文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 健康教育企画室 健康調査官の采女智津江氏が「組織活動の推進について‐保健室経営計画等‐」をテーマに語った。
保健室経営計画作成のメリットとして采女氏があげたのは、(1)学校保健目標等に基づく保健室経営を計画的、組織的に進めることができる、(2)児童生徒の健康課題を踏まえた保健室経営計画を立てることで健康課題を教職員間で共有できる、(3)教職員・保護者へ周知することで理解や協力が得られやすくなる、(4)評価を行うことで課題が明確になり次年度に生かすことができる等。
保健室経営計画を立てた養護教諭からは、「何をするか教職員に理解されているので、実施がスムーズになった」、「複数配置校なので、お互いの連携が取りやすくなった」といった感想が寄せられたという。
「組織的な対応における養護教諭の役割を追究する」をテーマに、宮城教育大学教授の数見隆生氏がコーディネーターを務め、小・中・高等学校それぞれの養護教諭から実践事例が紹介された。
【小学校事例】
他教員の「養護教諭観」
校内研修に参加し変化
福島県郡山市立行健第二小学校の湯田厚子教諭は、学習に悩みを抱えて保健室を訪れる児童に対応するため、校内研修に積極的に参加した。それにより目指しているものが同じことを教員に理解してもらうことができ、周囲の「養護教諭観」が変化したという。
【中学校事例】
中学の養教が小学校へ
中1プロブレム解消に
愛知県西尾市立西尾中学校の実践を発表したのは杉本康子教諭。同校の校区(同校含め3校)では、幼保小中の連携が図られており、(1)中1プロブレム解消に向けた中学校養護教諭による小6児童への保健指導、(2)学校医を講師とする救急法自主研修会、(3)小学校養護教諭による幼稚園や保育園への出前授業などが行われている。
【高校事例】
校内事例検討会を開き
サポート活動を認知
渡邉久美子教諭が勤務する千葉県立松戸国際高等学校では、保健室関連行事として、「校内事例検討会」「教員向け研修会」「保護者向け講演会」「生徒対象の心のアンケート」を、それぞれ年に1〜2回実施。校内事例検討会では精神科医をアドバイザーに迎え、生徒への対応について判断を仰いでいる。生徒の心のケアにあたるサポートチームの活動を、多くの職員に知ってもらう良い機会となっている。
学校医とは密に連絡を取り、いつでも協力を得られるようにし、連携が難しい生徒の主治医とは、主治医宛の手紙を生徒に持たせ連携。
数見氏は「子どもが発している問題行動等のサインを見逃さずに、読み解き、診たてる力が求められる。養護教諭・担任・保健主任を核とした連携で、学校教育を問い直すぐらいのパワーを持つべき」と締めくくった。
【2011年3月19日号】