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内閣府開催
不登校、ひきこもりへの支援を語る

家族への支援から始めることが重要

佐々木病院・斎藤環氏
佐々木病院・斎藤環氏

 1970年代後半から増加し、現在では数十万人から100万人程度いると推定されている「ひきこもり」(※1)。今年の4月からは内閣府を中心に厚生労働省、文部科学省が支援策を行っているが、12月4日には内閣府主催による特別企画「不登校、ひきこもりへの支援を語る」が東京工業大学で開催され、ひきこもりの支援に取り組んでいる関係者などが多数参加した(共催/東京都・横浜市・川崎市)。

 第1部では、爽風会佐々木病院の精神科診療部長の斎藤環氏と大阪大学非常勤講師の井出草平氏による発表と対談が行われた。

平均年齢27・3歳 高年齢化が顕著
爽風会佐々木病院精神科診療部長/斎藤環氏

 5月に発表された「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」の作成に参加した佐々木病院の斎藤氏は、「不登校・ひきこもりへの支援を語る」について講演。

 斎藤氏によると、ひきこもりは高年齢化しており、ひきこもりの診断を受けた人の平均年齢は27・3歳で、ほとんどは初診時で1年以上のひきこもり期間を有し、平均68・9か月に上るという。

 その後、8割が何らかの精神疾病に該当するようになり、長期化したケースは自力で社会参加することは著しく困難だと斎藤氏は指摘した。

 また、治療については、ひきこもりは精神疾患としては軽度が多いため、家族への対応だけで解決するケースもあり、家族への支援から始めることが重要と話す。しかし、最初の社会参加は慎重に行う必要があり、ワーキンググループなどを活用し緩やかに進めることが望まれる。
 ひきこもりの原因については、マズローの欲求段階説が、今日、通用しなくなっていることを指摘。現代の生活の中で、生理的欲求、安全の欲求は当然のこととされ、これらについての不安は意識されていない。一方で、帰属(愛情)の欲求、尊重の欲求、自己実現の欲求は並列的に意識されている。

 現代の若者は「働く」ことについて、他人や社会から承認されたいという動機が大きいのではないか、その一方で自己肯定感を持てないことがひきこもりの原因として大きいのではないかと指摘した。

 

大学生の不登校84%は中高での不登校経験なし

大阪大・井出草平氏
大阪大・井出草平氏

不登校経験約7割 関連性を指摘
大阪大学非常勤講師/ 井出草平氏

 続いて、大阪大学非常勤講師の井出草平氏が、不登校、引きこもりへの支援について講演。

 ひきこもりの人は不登校経験率が約7割と高く、関連性は高いと井出氏は指摘する。また、その大半が男性であるという特徴もある。そして、主に日本で社会問題として取り上げられていたが、近年では韓国やイタリアなどでも同様の事例が報告され始めたという。

 中学校で年間50日以上の長期欠席者率を見ると1980年頃から増加し、さらに90年代後半から急増しているため、今後、ひきこもりの増加も予想され何らかの対策が必要になってくるだろう。

 また、大学生における不登校は中高生の不登校と異なり、その84%は中学・高校での不登校経験がない。原因としてクラス制度が講義制となり、友人を作るためには積極的なコミュニケーションが必要となることが考えられる。高校生までは友人関係が原因となるが大学生は友人関係が作れないことが原因と考えられ、中高生とは異なる対応が求められると指摘した。

※1厚生労働省ひきこもり研究班による定義…様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出は可)を指す現象概念。なお、ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」より

 


【2010年12月18日号】