日本人の口腔内の疾病は、現在、むし歯から歯周病へと変化しており、口腔ケアが全身の健康と深く関わっていることも徐々に認知され、歯科医師と歯科医学・歯科医療の果たす役割は、今大きく変化している。日本の歯科医師の約75%が出身の私立歯科大学・歯学部で構成される、(社)日本私立歯科大学協会は、「“歯科医療”及び“歯科医師”に関する意識調査」を実施。95・7%の人が、自分の歯で食べることの重要性を認識していることがわかったが、一方で歯科医療に関する正しい情報が伝わっていないことも明らかになった。
「口腔の病気」が要因と
なり得ると思う病気 |
調査は、今年5月、10代から70代の男女1000人にインターネットで実施。
「歯科医院に通ったことがあるか」と質問したところ、「通ったことがある」は84・2%、「今現在通っている」が12%で、計96・2%の人が歯科医院への通院経験があることがわかる。
その目的は「むし歯の治療」が84・9%と8割以上を占めるが、18・2%が「歯周病(歯槽膿漏)の治療」と回答し、主訴はむし歯であるものの、歯科医院で歯周病が発見された場合も多く含まれていると考えられる。
また、オーラルケアを含む歯科医療に関する意識について、「自分の歯で食事を行うことが、“健康寿命”においてどの程度重要だと思いますか」という質問に対して、「とても重要と感じる」は55・2%、「重要と感じる」は40・5%と、計95・7%の人が重要性を感じていることがわかった。
また、「“口の健康”はあなたの健康にどの程度影響を及ぼすと思いますか」という問いに対しては、「非常に影響がある」28・8%、「まあ影響がある」48・6%を合わせると8割近い人が、口の健康が体全体への健康に関する影響があることを認識しているが、具体的に影響があると考える病名について尋ねると実に50・3%が「わからない」と答えている現状も明らかとなった。
歯肉炎は細菌の塊
全身疾患に関連
日本歯周病学会
伊藤公一理事長
8020財団が平成17年に報告した、永久歯の抜歯原因調査によると、41・8%が歯周病で、最もポイントが高い。
日本大学歯学部歯周病学講座教授で、日本歯周病学会理事長の伊藤公一氏(右の写真)によると、歯周病は痛みを伴わず進行に気がつかないことが多いため「沈黙の病気」と呼ばれており、若年層は歯肉炎が多い。歯肉炎は、プラーク量と大きく関連しており、単なる汚れではなく細菌の塊。プラーク内の細菌は、心臓血管障害や糖尿病、高脂血症などの全身疾患と関連しており、特に「歯周病は糖尿病の6番目の合併症とも言われております」と伊藤氏は述べる。
【2010年10月16日号】