講演する林教授 |
手書きする活動を通じて「3つの力=学習力、コミュニケーション力、創造力」を育成しようとする書育推進協議会(久米公会長)が8月19日、会員や学校関係者ら約80人が参加して都内で書育フォーラム2010を開催した。その中では先ごろ発表された常用漢字表改定について、文化審議会国語分科会長として会議に携わった林史典氏(現・聖徳大学教授)が講演した。
林氏は「情報化と漢字‐改定常用漢字表の意義」と題して、今回の改定までの推移(記事上の表)や改定の考え方、現場で指導する際の留意点などについて、次のように語った。
日本語の漢字は、一字ずつ意味を表わす漢字の特徴に加えて、日本独自の音訓が発達したことで、優れた表現力をもつ。古来、日本人は読み書き味わうことを教養の証しとしてきた。また「Literacy(能力)」の語源である「Literate」は「読み書き」を意味していることから、「読み書きは全ての学問の基礎、全ての学びにつながると言えるのではないか」として「書育」の重要性にも触れた。
終戦の翌年に告示された「当用漢字表」は国民社会共通の最小限で、公文書や新聞・雑誌で「使用する漢字の範囲」を示したもの。それから35年後の「常用漢字表」は「漢字使用の目安」であり、統制色があった当用漢字表では漢字の利点が生かしきれないという反省から作成されたという。
【漢字施策の推移】 ■「常用漢字表」見直し:5字削除、196字追加 |
今回の改定は、ワープロなど進展する情報化が時代背景。手書きの時代は「書ける文字」と「読める文字」がほぼイコールで「使える文字」だったことに比べ、現在は「読めるけど書けない」が増え、それも含めて「使える文字」の範囲も拡大している。
小中学校では(1)常用漢字の大体が読め(2)学年別漢字配当表の漢字を書ける、高校では(1)常用漢字が読め(2)主な常用漢字が書けるようになることなどが、学習指導要領での位置づけ。教育現場には、日本語の漢字の役割りについて理解を深め、興味と関心を持つような指導も期待したいとした。「言葉の習得と同じで、漢字は学校で教えられるものが全てではない、生涯を通じて習得するもの」、「あまり固く考えると無理が生じることもある」とまとめた。
「書育実践賞」新設
来年2月まで学校・家庭などの実践事例を募集
同会は学校、家庭、社会教育の場での優れた書育の実践事例を対象に、学校・教師、社会人などを顕彰する「書育実践賞」を創設した。募集は平成23年2月末まで。大賞1件、準大賞2件に賞金(大賞10万円、準大賞5万円)と副賞が贈られる。詳細は同会HPで近日掲載される。
http://www.jwima.org/shoiku/index.html
【2010年9月18日号】